The Browser Companyが新ブラウザ「Dia」発表:全タブを把握するAIを統合
The Browser Companyは新ブラウザ「Dia」のMac向けベータ版を既存のArcユーザー向けに公開した。垂直タブだったArcとは異なり従来の水平タブを採用し、全タブや履歴を把握できるAIチャットを右側に常駐させた。ブラウザ自体を個人用AIアシスタントに変える狙いがある。

The Browser CompanyがArcを開発した際、彼らはタブを縦に並べ、ブックマークと統合し、ブラウザのあらゆる構造を一から作り直そうとしました。熱狂的なファンを生んだ一方で、多くの一般ユーザーにとってはハードルが高すぎました。
同社はその現実を受け入れ、新たなブラウザ「Dia」を発表しました。現在、既存のArcユーザー向けにMac版のベータ提供が始まっています。今回は奇抜なUIを捨て、見た目はChromeに近く、右側にAIアシスタントを常駐させた構成になっています。
奇抜さを捨て、あえて「普通のタブ」に戻した理由
CEOのJosh Miller氏によると、Arcの利用データは残酷でした。使い方を理解した人は離れませんでしたが、大多数の人は理解する前に離脱していました。新奇性の高さそのものが参入障壁になっていたわけです。
そのためDiaは、洗練されたアニメーションを持つ親しみやすいブラウザとして作られており、水平タブが復活しています。Miller氏はこの変更を妥協ではなく、自省に基づく正しい選択だったと語っています。
その代わり、彼らが全力を注いだのがブラウザとAIの完全な融合です。Diaの右サイドバーにはChatGPTのようなチャットが配置されており、いま見ているページだけでなく、背後で開いているタブや閲覧履歴まで把握して対話できます。
複数のタブにまたがる面接メモを比較して評価をまとめたり、Slackのスレッドを要約して返信案を作ったりといった作業が、コピー&ペーストなしでシームレスに行えます。
ブラウザだけが持つ3つの切り札:履歴、URLバー、Cookie
単体のAIチャットではなく、なぜブラウザを作る必要があるのかについて、CTOのHursh Agrawal氏はブラウザ固有の3つの強みを挙げています。
1つ目は閲覧履歴によるパーソナライズです。ブラウザはユーザーがクリックした場所や入力した内容を常に把握しており、Diaは重要な情報を抽出してローカルで暗号化して保存します。使い込むほど、外部のAIには真似できない文脈理解が可能になります。
2つ目はCommandとTキーで開くアドレスバーです。PC上で人間の意図が最初に入力される場所であり、URLなら移動、検索語なら検索、複雑な指示なら最適なAIスキルへと振り分けられます。
3つ目はCookieの存在です。ログイン情報を持っているため、Diaはログイン後のWebサイトの内容をユーザーの代理として読み取ることができます。チーム内ではCookieを使ってミーティング予約などを自動化するエージェントも実験されましたが、勝手に動く不気味さや精度の問題から、初期バージョンでは自律操作を意図的に抑えています。
また同社は自社製モデルの開発から撤退し、既存のモデルを組み合わせる「ルーティングシステム」と各種スキル機能の開発に専念する方針に切り替えました。
なぜ重要か
私たちは、The Browser CompanyがUIの刷新競争から降りて「文脈の統合」に舵を切った判断は極めて合理的だと考えています。ユーザーの長年の操作習慣を変えるのは困難ですが、使い慣れた画面のままAIが周囲の文脈を理解してくれるなら、受け入れられる可能性は大幅に高まります。
日常的に複数のWebページを見比べながら文章を書いたり、社内ツールのデータを整理したりしている人にとって、Diaのタブ横断コンテキスト機能はこれまでのコピペ作業を劇的に減らしてくれます。Macユーザーであれば、今すぐ試す価値が十分にあります。
懸念されるのはプライバシーに対する心理的な抵抗感です。データはローカルに保存され、クラウドの処理データも即座に消去される設計ですが、ブラウザが自分の行動や機密情報をすべて把握しているという事実そのものに恐怖を覚えるユーザーは少なくないはずです。
業界全体を見渡せば、GoogleがChromeにGeminiを組み込み、PerplexityやOpenAIもブラウザ領域を狙っています。Diaが構築した優れたルーティング機能や使い心地が、巨大なシェアを持つChromeの標準機能に対抗し続けられるかが今後の焦点になります。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com