バイデン米大統領、連邦都有地を開放しAIデータセンター建設を加速する大統領令に署名
バイデン大統領はAIデータセンターの建設加速に向けた大統領令に署名した。国防総省とエネルギー省に対し、2月28日までに連邦都有地から候補地を各3箇所以上選定させ民間へ貸し出す。企業には自前でのクリーン電力調達や米国製半導体の使用を義務付けるが、電力網逼迫への懸念も根強い。

AI開発に必要な電力が逼迫するなか、米政府が国有地の開放に踏み切りました。
バイデン米大統領は、国内におけるAIデータセンターの建設を加速させる大統領令に署名しました。連邦政府が管轄する広大な土地を民間企業に開放し、建設に伴う許認可手続きを大幅に前倒しする方針です。バイデン大統領は声明で、未来を左右するテクノロジーの建設競争において米国が遅れを取ることは許されないと強調しました。
国防総省とエネルギー省の土地を開放
今回の命令では、国防総省とエネルギー省に対し、ギガワット規模の大型AIデータセンターとクリーンエネルギー発電施設を建設する民間企業へ連邦用地をリースするよう指示しています。両省は2月28日までに、それぞれが管理する敷地内から少なくとも3カ所の候補地を選定しなければなりません。
さらに、連邦機関に対してAIインフラの許認可を最優先で迅速に処理するよう義務付けました。国家環境政策法(NEPA)に基づく審査プロセスにおいて、特定の審査を免除する「適用除外」を設けて工期を縮める見込みです。
住民の電気代高騰に対する懸念を和らげるための条件も盛り込まれました。開発事業者はデータセンター本体だけでなく、送電線や発電施設を含むすべての建設・運用コストを自己負担することが求められます。利用する電力は新設のクリーンエネルギーから調達する必要があり、米国内で製造された半導体の適切な調達や、モデルの安全保障上のリスク評価も義務付けられます。
電力危機と環境団体の反発
政府がここまで強硬な姿勢をとる背景には、AIによる電力消費の爆発的な増加があります。ローレンス・バークレー国立研究所が12月20日に公表した試算によると、米国のデータセンターの電力需要は過去10年で3倍に膨らみました。2023年時点で全米の電力消費の約4.4パーセントを占めており、2028年には最大12パーセントに達する可能性があります。
現場ではすでに、急増する電力需要を支えるために、閉鎖予定だった石炭火力発電所やガス火力発電所の稼働延長が進んでおり、一般家庭の電気料金も押し上げられています。
これに対し、12月17日にはエリザベス・ウォーレン氏ら民主党の上院議員5名が、環境基準の緩和や消費者の負担増を避けるよう求める書簡を政権に提出しました。環境団体エンバイロメント・アメリカのヨハンナ・ノイマン氏も、適切な枠組みがなければ、AIのエネルギー需要が脱炭素の取り組みを台無しにしかねないと警鐘を鳴らしています。
なぜ重要か
先端AIの開発競争において、いま最大のボトルネックとなっているのはGPUそのものよりも電力と用地の確保です。国防総省やエネルギー省の広大な土地を活用し、許認可の壁を力技で突破しようとする今回の手法は、AIインフラを完全に国家安全保障の文脈で捉え直した動きと言えます。
クラウド事業者やAI開発企業にとっては、地域住民との交渉や複雑な環境アセスメントを迂回してギガワット級の拠点を確保できる大きなチャンスです。しかし、一般市民への影響を完全に遮断できるかといえば、私たちは疑問が残ると考えています。
いくら企業側が新設のクリーン電力を自前で調達すると約束しても、送電網全体の負荷が増加すれば、既存の火力発電に頼らざるを得ない場面が出てきます。脱炭素という従来の公約と、AI覇権を維持するための電力確保という現実的な要請の間で、米政府は極めて危うい綱渡りを強いられることになりそうです。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com