米サンダース議員、OpenAIなどAI大手に「50%の自社株課税」を提案
米国のバーニー・サンダース上院議員は、OpenAIやAnthropicなどの大手AI企業に一時的な50%の自社株課税を行い、政府系ファンドを創設する法案を発表した。議決権や取締役の席を確保して利益を国民に還元する狙いで、AIは人類の集合知で築かれた公共の富であると訴えている。
米上院議員のバーニー・サンダース氏が、AI業界を揺るがす大胆な法案を予告しました。
サンダース氏は6月1日付の米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、「米国AI主権富裕ファンド法(American A.I. Sovereign Wealth Fund Act)」を近く議会に提出すると表明しました。OpenAI、Anthropic、xAIといった米国内の大手AI企業に対し、1回限りとなる50パーセントの特別課税を課す内容です。
最大のポイントは、税金を手元の利益や現金ではなく、各社の株式で納めさせる点にあります。
人類の集合知を勝手に使ったツケを払え
サンダース氏の主張は至ってシンプルです。生成AIの知識は、サム・アルトマン氏やイーロン・マスク氏の頭の中から突然湧き出たものではありません。
これらのモデルは、何世代にもわたる人類が蓄積してきた書籍、音楽、芸術、報道記事、プログラムコード、科学論文などを無断で読み込ませて作られました。アルトマン氏自身も過去に、モデルが人類の経験や知識の集積によって訓練されていると認めています。
サンダース氏は、何百万人もの創作者や市民の知的成果が対価もなしに奪われたと指摘します。人類共通の財産をもとに築かれたAIの富を、一握りの億万長者やシリコンバレーの投資家だけで独占させるわけにはいかないという論理です。
法案が成立すれば、政府が設立する主権富裕ファンドが株式を保有します。さらに連邦政府が各社の取締役会で半数の議席と議決権を握り、市民に不利益をもたらす決定を阻止できるように設計されています。
経営陣自身の言葉をそのまま武器に
サンダース氏は、この構想が突拍子もない思いつきではない証拠として、皮肉にもAIトップたちの過去の発言を並べています。
OpenAIはかつて、金融市場に投資していない市民もAI経済の果実を得られるよう公共富裕ファンドの設立を提言していました。Anthropicのダリオ・アモデイ氏も同様の国家ファンド構想に言及し、xAIを率いるマスク氏に至っては、AIによる失業対策として政府からの高額な給付金支給を主張しています。
国家資産からファンドを作る前例はすでにあります。2兆ドル以上の規模を誇るノルウェーの政府年金基金は石油資源から生まれ、一部の石油資本だけでなく国民全体に富を還元してきました。アラスカ州も50年前に同様の仕組みを導入しています。
なぜ重要か
この法案がそのまま米議会を通る可能性は極めて低いとみられますが、議論の潮目を大きく変える力を持っています。
一般ユーザーや創作者の視点では、これまでの著作権侵害をめぐる法廷闘争から一気にステージが進んだ形です。データ学習の対価を個別に請求するのではなく、企業の所有権そのものを半分取り戻すという極端なアプローチは、搾取感を抱いてきたクリエイター層から一定の支持を集めるはずです。
業界にとっては、これまで描いてきたバラ色の未来像が自らを縛る罠になりました。アルトマン氏らは規制をかわすために「AIが生み出す途方もない富を人類に還元する」というユートピア的な物語を語ってきましたが、サンダース氏はその言葉を逆手に取り、最も痛烈な課税法案に仕立て上げました。
取締役の半数を政府が握るとなれば、企業経営や技術開発の停滞は避けられず、法的なハードルも山積みです。しかし、AIによる雇用喪失への不安が高まる中、巨大テック企業は今後、利益分配や著作権補償に関してこれまで以上の妥協を迫られることになりそうです。
情報源 (2)
- nytimes.com(新しいタブで開きます)原文nytimes.com
- sanders.senate.gov(新しいタブで開きます)報道sanders.senate.gov