Anthropic、Claudeのコンテキスト長を10万トークンに拡大
AnthropicはClaudeのコンテキストウィンドウを従来の9Kから100Kトークン(約7万5000語)に拡張した。数百ページの書類や決算書を一括で読み込ませて数分で要約や質疑応答が可能になり、API経由で利用できる。

数十ページの決算資料や分厚い技術マニュアルをAIに入力しようとして、文字数制限に阻まれた経験を持つ人は多いはずです。
Anthropicはその壁を一気に引き上げました。同社はClaudeのコンテキストウィンドウを従来の9Kトークンから100Kトークンへと大幅に拡張しました。これは英語で約7万5000語、一般的な書籍なら数百ページ分に相当する分量です。
7万語の小説から22秒で改ざんを発見
10万トークンというテキスト量は、人間が通読するだけでも5時間以上かかります。その内容を頭の中で整理して分析するとなれば、さらに膨大な時間が必要です。
Claudeはこの量を1分未満で処理できます。
Anthropicは性能を実証するために、名作小説『グレート・ギャツビー』全文(約7万2000トークン)をClaude-Instantに読み込ませる実験を行いました。本文中の1行だけを書き換え、語り手のキャラウェイが「Anthropicで機械学習ツールを手がけるソフトウェアエンジニア」であるという記述を忍ばせました。
モデルに改ざん箇所を尋ねたところ、わずか22秒で正確な修正箇所を指摘してみせました。
外部パートナーの活用も始まっています。音声認識のAssemblyAIは、約6時間分に及ぶポッドキャスト音声を5万8000語のテキストに起こし、Claudeを使って要約や質疑応答を行うデモを公開しました。
この100Kコンテキストウィンドウは、すでに同社のAPI経由で利用可能になっています。
ベクトル検索に頼らず全文を一括投入
長文の処理といえば、テキストを細かく分割してベクトルデータベースに保存し、関連箇所だけを取り出す手法が一般的でした。
しかし、文書全体の文脈を横断して総合的に判断する必要がある複雑な問いでは、断片化された情報だけでは限界がありました。
100Kトークンが扱えれば、複数の財務諸表や法案の全文、さらにはコードベース丸ごとプロンプトに直接投入できます。断片的な検索を挟まずに、人間のアシスタントに資料を丸ごと手渡して読ませるような使い方が可能になります。
なぜ重要か
今回の拡張は、生成AIの実用性をチャットのお遊びから本格的な業務インフラへと引き上げる重要な転換点になると私たちは考えています。
ビジネスユーザーや開発者にとって最大のメリットは、複雑な検索システムの構築負担を減らせる点です。数十ページから数百ページ程度のドキュメントであれば、分割や検索のパイプラインを組むことなく、APIに全文を流し込むだけで高精度な分析が得られます。
ただし、課題がないわけではありません。1回のプロンプトに10万トークンを詰め込めば、APIの利用コストや応答時間は短文に比べて確実に跳ね上がります。すべての作業に無差別に使えるわけではありません。
また、単一の明確な改ざんを見つけ出すテストと、矛盾だらけの長文契約書から微妙なリスクを漏れなく洗い出す実務とでは難易度が異なります。長文の奥深くに埋もれた情報をどこまで正確に保持し続けられるかは、今後の検証が必要です。
それでも、Anthropicが提示した「本をまるごと読ませる」という基準は、他のモデル開発企業にとっても無視できない強いプレッシャーになるはずです。
情報源 (1)
- anthropic.com(新しいタブで開きます)原文anthropic.com