米アンドリュー・ヤン氏、労働者への課税廃止とAI企業への課税を提唱
米国の元大統領候補アンドリュー・ヤン氏がCNBCの番組で、労働者への課税をやめ、自動化の恩恵を受けるAI企業に課税すべきだと訴えた。業界関係者の話として今後6カ月のAI開発は過去10年を上回ると指摘し、雇用代替が進むなか税制の根本的な見直しを求めている。

タバコや炭素排出のように、社会が減らしたいものに課税するのが税の基本です。しかし、AIが労働市場を激変させつつある今、その常識を見直すべきだと主張する声が上がっています。
米大統領選にも出馬した前進党の創設者、アンドリュー・ヤン氏は水曜日、米CNBCの番組「Squawk Box」に出演し、労働者への課税をやめ、自動化の恩恵を最も受けているAI企業への課税にシフトすべきだと語りました。労働という社会が奨励すべきものに税を課し、雇用を代替するアルゴリズムを優遇する現在の仕組みは、社会契約を壊していると指摘しています。
「次の6カ月の進化は過去10年を凌駕する」
ヤン氏が危機感を募らせる背景には、AI技術の加速度的な進化があります。
米西部のAIカンファレンスから戻ったばかりの同氏によると、業界関係者らは「今後6カ月で起きるAIの進化は、過去10年間の成果を完全に上回る」と口を揃えたといいます。
その変化はすでに数字に表れています。ヤン氏が挙げた自律型コーディングツールを大企業に販売するあるスタートアップは、過去12カ月で売上が100倍に急拡大しました。
企業のIT予算は無制限ではありません。AIソフトウェアへの支出急増は、かつて人間のエンジニアに支払われていた人件費を直接侵食しています。今週もアトラシアンがAI時代に向けた事業再編を理由に1600人の人員削減を発表したばかりです。ヤン氏は、数百万人の人々にとって、この移行期が平穏なものになる可能性はゼロだと警告しました。
課税を自ら望むテック経営者たち
労働課税の見直しを求める声は、政治家だけでなくテック界のトップからも出始めています。
ヤン氏は、Anthropicのダリオ・アモデイCEOが昨年、今後5年以内に新卒などのエントリーレベルのホワイトカラー業務の最大50%が自動化される可能性があると警告し、同時にAI企業自らへの課税を提案したことを引き合いに出しました。
大企業のCEOが自ら「私と私の会社に課税してほしい」と手を挙げるのは極めて異例です。ヤン氏はこの動きについて、テック界のリーダーたち自身が将来の激しい反発を予見し、不吉な兆候を察知している証拠だと指摘しました。
同様の議論は党派を超えて広がっています。先月には著名投資家のヴィノッド・コースラ氏がXへの投稿で、AIが雇用を奪うなら大半のアメリカ人の所得税を撤廃し資本への課税に切り替えるべきだと提唱しました。さらに昨年10月にはバーニー・サンダース上院議員も、雇用を代替する企業に対するロボット税の導入を求める報告書を発表しています。
なぜ重要か
ヤン氏の指摘は、現在の税制が抱える構造的な矛盾を突いています。人間を雇用すれば給与税や社会保障負担が発生する一方で、AIエージェントの導入は経費として処理できるため、企業にとって人間からAIへの置き換えは極めて有利な選択肢になっています。ホワイトカラーの初級職がこれほど急速に消えつつある背景には、こうした税制の後押しもあります。
私たちは、労働から資本・自動化へと課税の重点を移すという理念には一理あると考えます。ただし、実際の運用は極めて困難です。何をもってAIとするのか、コンピュート資源に課税するのか、API収益に課税するのか、線引きが曖昧なまま導入されれば、新興スタートアップの成長を阻害するリスクを孕んでいます。
また、AI企業のトップ自らが課税を歓迎する姿勢を見せている点も、単なる善意とは受け取れません。将来的な反トラスト法による解体や厳格な事業規制を避けるため、税金を払うことで社会的責任を果たしたとする一種の防衛策にも見えます。
一般のビジネスパーソンにとって、税制改革が雇用を守ってくれるのを待つ時間は残されていません。企業の予算配分が人間から自動化ツールへとシフトしている現実はすでに動かしがたく、定型的なホワイトカラー業務に依存している働き手は、AIを使いこなす側へ早急にスキルを移行させる必要があります。
情報源 (1)
- businessinsider.com(新しいタブで開きます)原文businessinsider.com