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研究

AIで致死性スーパーバグを倒す新抗生物質を発見 1時間半で候補特定

公開 拡散指数 49

米加の研究チームがAIを活用し、多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニに効く新抗生物質「abaucin」を発見した。AIは6680種類の化合物からわずか1時間半で候補を絞り込み特定に成功。標的菌のみに作用するため耐性化しにくい利点があるが、臨床応用には2030年頃までかかる見通しだ。

AIで致死性スーパーバグを倒す新抗生物質を発見 1時間半で候補特定
画像:bbc.com

薬剤耐性を持つスーパーバグの進化スピードに、新薬の開発は長年追いついていません。抗生剤が効かない感染症で命を落とす人は、世界で年間100万人を超えています。

こうした危機的状況のなか、マックマスター大学とマサチューセッツ工科大学の研究チームが、AIを活用して極めて強力な新薬候補「アバウシン(abaucin)」を発見しました。英科学誌ネイチャー・ケミカル・バイオロジーに論文が掲載されています。

6680化合物をわずか1時間半で選別

今回標的となったのは、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)です。WHOが最も危険な「危機的」脅威の1つに指定している菌で、医療機関の表面や機器に潜み、重篤な肺炎や創傷感染を引き起こします。Jonathan Stokes博士が「公敵ナンバーワン」と呼ぶほど、既存の抗生剤がほぼ効かない厄介な存在です。

研究チームはまず、化学構造が既知の数千の薬を実際にバウマニ菌に投与し、効き目の有無をデータ化してAIに学習させました。

学習を終えたAIに効果未知の化合物6680種類を読み込ませたところ、わずか1時間半で有望株を絞り込みました。研究者が候補となった240種を実験室で検証した結果、9つの有効な抗生物質候補が見つかり、その筆頭がアバウシンでした。マウス実験では感染創の治療に成功し、患者由来の菌株も死滅させました。

標的だけを狙い撃つ「精密射撃」

アバウシンの際立った特徴は、他の細菌には一切効かず、アシネトバクター・バウマニだけに作用する極めて高い特異性です。

従来の抗生剤は善玉菌まで巻き込む広域スペクトルのものが多く、副作用や新たな耐性菌を生む温床になっていました。標的を1つに絞るアバウシンなら、耐性の獲得を遅らせ、副作用も抑えられると期待されています。

ただし、実用化へのハードルはまだ残っています。Stokes博士によれば、分子の改良や治験を経て臨床で処方できるようになるのは2030年頃になる見通しです。研究チームはすでに、黄色ブドウ球菌や緑膿菌へのAI適用も進めています。

なぜ重要か

抗生物質の開発は、莫大な費用がかかる一方で耐性を防ぐため使用が控えられやすく、製薬企業が撤退し続けてきた分野です。

今回の成果が賢いのは、これまで何年もかかっていた初期スクリーニングをわずか数時間に短縮し、限られた予算の研究室でも新薬探索を行える道を開いた点にあります。何千万もの化合物を計算上で探索できるため、創薬の入り口にかかるコストと時間は劇的に下がります。

一方で課題もあります。AIがどれほど候補を瞬時に見つけても、生体での安全性確認や数年におよぶ臨床試験の工程をスキップすることはできません。AIは創薬のボトルネックを解消する強力な武器になりますが、魔法のように明日すぐ薬が届くわけではないという点は冷静に見極める必要があります。

情報源 (2)

  1. [1]
    bbc.com(新しいタブで開きます)原文bbc.com
  2. [2]

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