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研究

アールト大、光速で深層学習を処理する「光テンソル計算」技術を発表

公開 拡散指数 31

アールト大学の研究チームが、1回の光伝播だけで畳み込みやアテンション層などのテンソル計算を完了させる光コンピューティング技術を発表した。光の振幅と位相にデータを乗せて受動的に計算するため、電子回路のような電力負荷がかからない。GPUの性能限界を超える次世代AI基盤として、3〜5年以内の実用化を目指す。

アールト大、光速で深層学習を処理する「光テンソル計算」技術を発表
画像:techxplore.com

最先端の AI モデルを動かす際、膨大な電力と計算時間を消費しているのがテンソル演算と呼ばれる多次元の行列計算です。従来の GPU はこれを電子回路で順を追って処理していますが、フィンランドのアールト大学の研究チームが、光の伝播を一回通すだけで完了させる新技術を実証しました。

アールト大学電子・ナノ工学科の Yufeng Zhang 博士らが率いる国際研究チームは、光の物理特性を利用してテンソル演算を一瞬で行う「シングルショット光テンソル計算」に成功し、論文を学術誌 Nature Photonics に発表しました。

光の波にデータを乗せ、一度の通過で計算を終える

画像認識から大規模言語モデルのアテンション機構に至るまで、現代の AI はテンソル演算に依存しています。しかしデータ量の急増に伴い、従来の電子式 GPU は処理速度、拡張性、消費電力の物理的な限界に直面しつつあります。

研究チームは電子回路を使う代わりに、デジタルデータを光波の振幅と位相に直接エンコードする手法を開発しました。数値を光の物理特性に変換した上で光同士を干渉・合成させると、物理現象そのものが深層学習に必要な行列乗算やテンソル積の役割を果たします。

さらに複数の異なる波長を導入することで、より高次のテンソル演算にも対応させました。Zhang 博士は、従来は荷物を一つずつ検査装置に通して仕分けていた税関業務を、光のフックですべての荷物と装置を一瞬で並列接続し、一度の光の伝播ですべての検査と仕分けを同時に終わらせるようなものだと説明しています。

最大の特徴は受動的な計算である点です。光が進む過程で自然に計算結果が得られるため、計算の途中で能動的な電子スイッチの切り替えや電力制御を必要としません。

光チップへの集積と、3〜5年での実用化目標

アールト大学フォトニクスグループを率いる Zhipei Sun 教授によれば、この計算フレームワークはほぼあらゆる光学プラットフォームに適用可能です。研究チームは今後、この仕組みを光集積回路(フォトニックチップ)に直接組み込み、超低消費電力で高度な AI タスクをこなすプロセッサの開発を目指しています。

Zhang 博士は、この技術が既存の主要企業のハードウェアやプラットフォームに統合されるまでには、控えめに見ても 3 年から 5 年程度かかると見込んでいます。

なぜ重要か

AI の運用コストと消費電力が世界的な課題となる中、微細化の限界に近づく半導体シリコンに代わり、光で計算を肩代わりさせる試みは極めて合理的です。

私たちが注目するのは、アテンション層や畳み込みといった生成 AI の最も重い処理を、受動的な光の一振りで処理してしまう発想の巧みさです。計算そのものに電力を消費しない仕組みが完成すれば、データセンターの電力消費と遅延を一気に引き下げられる可能性があります。

ただし、実用化にはまだ越えるべき壁があります。光計算自体が一瞬だとしても、現在のコンピュータが扱う電気信号と光信号を相互変換する際に生じる遅延やエネルギー損失が大きければ、全体の利得が相殺されてしまうリスクがあります。光チップの量産性や精度の安定化も不可欠です。

とはいえ、研究チームが 3〜5 年という現実的な統合スケジュールを提示した点は注目に値します。GPU 一強の AI インフラ市場において、光コンピューティングが本格的なコプロセッサとして食い込んでくるか、今後のチップ統合の進展を注視する必要があります。

情報源 (1)

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    techxplore.com(新しいタブで開きます)原文techxplore.com

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