YouTube、顔や声を模倣したAI生成動画の削除申請に対応
YouTubeは6月、本人の顔や音声を模倣したAI生成コンテンツについて、プライバシー侵害として削除要請を受け付ける新方針を導入した。原則として本人の申し立てが必要で、投稿者には48時間の対応猶予が与えられる。公益性やパロディかどうかも考慮され審査される。

自分の顔や声をAIで勝手に合成された動画を見つけたとき、これまでは削除要請のハードルが低くありませんでした。
YouTubeは6月、自身の顔や声を模倣したAI生成動画の削除を申請できる新ポリシーを静かに導入しました。これは同社が昨年11月に発表した、責任あるAIへの取り組みを具体化したものです。
今回の変更で注目すべきは、ディープフェイクを「誤情報」としてではなく、「プライバシーの侵害」として申し立てる形にした点です。
本人申請が原則、投稿者には48時間の猶予
更新されたYouTubeのヘルプページによると、削除の申請は原則として被害を受けた本人が行う必要があります。例外として認められるのは、本人が未成年である場合や、パソコンを使えない環境にある場合、あるいは故人である場合などに限られます。
ただし、申請すれば無条件で動画が消えるわけではありません。YouTube側が複数の要素を考慮して独自の判断を下します。
具体的には、AI製である旨のラベルが開示されているか、特定の個人を識別できるか、パロディや風刺など公共の利益にかなう表現かが審査されます。対象が著名人の場合は、犯罪行為や暴力、あるいは製品や政治家の支持表明といったセンシティブな行為に関与しているように見せかけているかが重視されます。
申し立てが届くと、投稿者には48時間の猶予が与えられます。この時間内に動画が削除されれば申し立ては終了し、対応がなければYouTubeが直接審査に入ります。
動画全体を消さず、ツールを使って顔にモザイクをかけたり、タイトルや説明欄から個人名を削除することでも対応できます。ただし、非公開設定にするだけではいつでも公開に戻せるため、要件を満たしたとはみなされません。なお、このプライバシー侵害による削除は、通常のコミュニティガイドライン違反の警告とは区別されるため、即座にペナルティが科されるわけではありませんが、度重なる違反には厳しい措置が取られます。
なぜ重要か
一般ユーザーにとって、自分の顔や声が無断で使われたときの防衛手段が明確になった意味は大きいです。名誉毀損や詐欺動画だと証明するより、プライバシー権を理由にするほうが申請の敷居ははるかに下がります。
YouTubeのアプローチは賢明だと考えられます。特に選挙の時期に「誤情報かどうか」をプラットフォームが判定しようとすると、政治的な中立性を巡る泥沼に巻き込まれがちです。それを本人の肖像や声というプライバシーの問題に落とし込むことで、審査の焦点を絞ることができます。
懸念されるのは、パロディや公共性といった例外規定の曖昧さです。悪質な模倣であっても「風刺だ」と言い逃れされる隙が残ります。また、48時間の猶予がある間に動画が拡散してしまうリスクもあり、被害を完全に食い止められるかは今後の運用のスピード感にかかっています。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com