米ホワイトハウス、Anthropic「Mythos」の民間提供拡大に難色
米ホワイトハウスがAnthropicのAI「Mythos」の民間提供を約50社から約120社へ広げる計画に難色を示している。政府利用の計算資源不足を名目に挙げつつ、高いサイバー能力を持つモデルを安保目的で囲い込みたい思惑と、対立姿勢の維持との間で板挟みになっている。

数カ月前までAI規制を「愚かなルール」と批判し、徹底した規制緩和を進めていた米ホワイトハウスが一転してブレーキを踏み始めている。
発端は、Anthropicが開発した「Mythos」の極めて高度なサイバー機能だ。ニューヨーク・タイムズなどの報道によると、トランプ政権はAIモデルの一般公開前に政府が事前審査を行う枠組みを含め、規制導入を検討する大統領令の策定に向け協議を進めている。
計算資源の囲い込みと省庁間の温度差
現在、最も直接的な対立が生じているのが計算資源の配分だ。
AnthropicはMythosの民間アクセスを約50社から約120社へと倍増させる計画だった。しかし米政府関係者は、政府機関での利用に必要な計算資源が圧迫されるとして異議を唱えている。事実上、政府が自らの利用枠を最優先させようとしている形だ。
一方で、ホワイトハウスは国家安全保障メモを準備しており、各省庁にマルチベンダーでのAI採用を促す見通しだ。Axiosによれば、これにより現在進行中の法的争いにもかかわらず、各機関がサプライチェーンリスク指定を回避してAnthropicの技術を導入できるようになるという。
しかし足並みは揃っていない。ホワイトハウス当局者がGoogle、OpenAI、Anthropicの幹部と面談して審査計画を伝える一方、ピート・ヘグセス戦争長官は木曜日、Anthropicを「イデオロギー的な狂人が運営している」と発言しており、強硬姿勢と実利優先の間で政権内部の分断が浮き彫りになっている。
「美しい赤ん坊」から一転、英型審査へ
この動きは、中国との競争を優先してバイデン政権下の安全基準報告義務を撤廃してきたトランプ政権にとって明らかな方針転換を意味する。
トランプ氏は7月のイベントでAIを「生まれたばかりの美しい赤ん坊」に例え、愚かな規則で邪魔をしてはならないと語っていた。しかしニューヨーク・タイムズによると、破壊的なAIサイバー攻撃が発生した際の政治的打撃を懸念する声が政権内で急速に高まっているという。
検討中の審査プロセスは、複数の機関が安全基準への適合を確認する英国のモデルに近いとされる。元AI政策担当のDavid Sacks氏は、GPT 5.5もすでにMythosと同等のサイバー能力に達しており、半年以内にすべてのフロンティアモデルがこの水準に並ぶと指摘している。
なぜ重要か
今回の動きは、最先端モデルがもたらす現実の脅威を前にして、完全な放任主義を維持することがいかに困難であるかを物語っている。
企業や開発者にとっては、アクセス制限と不確実性が直接の痛手となる。Mythosの利用を待っていた企業は、政府による計算資源の確保を理由に導入が遅れるリスクを抱えることになり、今後は他社モデルも含めて公開前の安全審査がボトルネックになる可能性がある。
政策の進め方としても極めて矛盾を抱えている。Anthropicのサイバー能力を利用したいがために調達の抜け道を作る一方で、事前審査という新たなハードルを設けようとしているからだ。半年後には同等の能力が業界全体に普及すると見られる中、個別の計算資源を取り合ったり場当たり的な審査を検討するだけでは、急速な技術拡散のスピードに到底追いつけないのではないかと見ている。
情報源 (2)
- nytimes.com(新しいタブで開きます)原文nytimes.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com