米ホワイトハウス、Anthropicの「Mythos」利用枠拡大に難色
米ホワイトハウスは、Anthropicが新モデル「Mythos」の民間向け提供先を約50社から120社近くへ拡大する計画に反対した。計算リソースが圧迫され、政府機関の利用に支障が出ることを懸念している。同モデルの高いサイバーセキュリティ能力を囲い込みたい政府の思惑が浮き彫りになっている。

数か月間にわたり Anthropic と激しい対立を続けてきた米政府ですが、強力なサイバー能力を持つ新モデル「Mythos」の登場により、その対応は一筋縄ではいかなくなっています。
Wall Street Journal や Bloomberg の報道によると、Anthropic は Mythos の限定提供先を現在の約 50 社から約 120 社へと、約 70 社分拡大する計画を進めていました。しかし、ホワイトハウス当局者がこれに異議を唱え、計画の差し戻しを求めていることが明らかになりました。
計算資源の枯渇懸念とセキュリティへの警戒
米政府が難色を示した主な理由は、計算資源の逼迫とモデルの危険性という 2 点にあります。
米政府関係者は、Anthropic が多数の民間企業にアクセスを開放した場合、政府機関が Mythos を効果的に利用するための計算リソースが不足するのではないかと懸念しています。つまり、政府自身の利用枠を優先的に確保したい意向が背景にあります。
もうひとつの懸念は安全面です。4 月初旬に発表された Mythos は、重要ソフトウェアの深刻な脆弱性を自動で検出し、悪用コードまで生成できる高度なサイバー攻撃能力を備えています。Anthropic 自身も広範な公開は危険すぎると判断し、厳格な限定提供にとどめていました。
さらに Bloomberg は、Anthropic が限定公開を発表したまさにその日に、非公開のオンラインフォーラムに集まる無許可ユーザーのグループが Mythos へのアクセス権を一時的に不正取得していた事実を報じています。
激化する内部対立と他社モデルの追随
今回の介入は、米政府内部の複雑なねじれを浮き彫りにしています。
Pete Hegseth 国防長官が先週、Anthropic の経営陣を公然と批判するなど、国防総省との法廷闘争は依然として続いています。その一方で、Axios によるとホワイトハウスは各省庁に複数ベンダーの AI 採用を促す覚書を準備しており、供給網リスク指定を回避して Anthropic のツールを活用できるように動いているとされます。
国家安全保障のために Mythos の能力を手元に囲い込みたいものの、民間への拡散は抑え込みたく、かつ Anthropic に完全屈服したようには見せたくないという、極めて窮屈な立ち回りを強いられています。
ただし、この独占状態が長く続く気配はありません。すでに GPT 5.5 が Mythos と同等のサイバー能力に達したと報じられており、元米政府 AI 担当の David Sacks 氏も、あと半年もすればすべての最先端フロンティアモデルがこの水準に達するだろうと指摘しています。
なぜ重要か
企業のセキュリティ担当者にとって、Mythos を活用した脆弱性検査や自動防御の導入計画は、当面の間見直しを迫られることになります。極めて高いサイバー攻撃力を持つモデルは、今後も政府の規制や介入の対象になりやすく、民間への提供が急遽凍結されるリスクを織り込んでおく必要があります。
業界全体にとって、今回の動きは重要な前例を作りました。「政府自身の利用に必要な計算資源が圧迫される」という理由で、民間 AI 企業の顧客拡大を制止した点は、事実上の国家によるリソース優先確保に近い措置といえます。
私たちは、ホワイトハウスのこの対応は場当たり的であり、技術の進化スピードに追いついていないと考えています。Anthropic 1 社の民間展開を力ずくで抑え込んでも、OpenAI などの競合が数か月以内に同等モデルを一般提供すれば、政府による囲い込み戦略はあっという間に形骸化する可能性が高いと見られます。
情報源 (2)
- wsj.com(新しいタブで開きます)原文wsj.com
- eastbaytimes.com(新しいタブで開きます)報道eastbaytimes.com