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研究

アールト大などが仮想現実ゲームを開発:視線追跡と機械学習でADHDを客観検出

公開 拡散指数 44

アールト大学などの研究チームは、仮想現実ゲーム中の視線追跡と機械学習を組み合わせ、子どものADHD症状を客観的に検出する手法を発表した。主観的な問診に依存してきた診断を、日常動作のシミュレーションで高精度化する狙いだ。

画像:aalto.fi

子どものADHD(注意欠如・多動症)の診断は、長年にわたり質問票や面談、医師による主観的な観察に頼ってきました。しかし、静かな診察室での検査では、日常生活の騒がしい環境で子どもがどう行動するかまでは分かりません。

フィンランドのアールト大学、ヘルシンキ大学、オーボ・アカデミー大学の研究チームは、VR(仮想現実)ゲームとアイトラッキング、機械学習を組み合わせ、視線の動きからADHDの傾向を客観的に検出する手法を発表しました。研究成果は学術誌「Scientific Reports」に掲載されています。

気が散る部屋で「歯磨き」をこなす

研究には、ADHDと診断された子ども37人と対照群の子ども36人が参加しました。使われたのは、アールト大学発のスタートアップPeili Visionが開発を主導したVRゲーム「EPELI」です。

ゲームの内容は、仮想の部屋の中で歯を磨いたりバナナを食べたりといった日常のタスクをこなすというもの。ただし室内ではテレビが点いているなど、周囲には気が散る仕掛けが散りばめられています。システムはタスクの達成度やコントローラーの操作だけでなく、子どもの自然な目の動きを細かく記録しました。

収集したデータを機械学習で分析したところ、ADHDの子どもは特定の物体を長く見つめる一方で、視線の移動スピードが速く、別の場所へ頻繁に視線が飛ぶ傾向が明らかになりました。研究者は、これが視覚システムの発達の遅れや情報処理の違いを示している可能性があると説明しています。

臨床現場からパーキンソン病の早期発見へ

プロジェクトを率いるJuha Salmitaival氏によると、この手法の強みは子どものモチベーションを高められる点にあります。退屈な従来の神経心理学テストと比べ、子どもが意欲的に取り組んでくれます。

ゲームはすでにヘルシンキ大学病院の小児神経科や小児精神科の神経心理学者向けに提供されており、パイロット調査では回答者全員が補助ツールとしての有用性を認めたといいます。研究チームは今後、米国で承認されている事例のようにリハビリ用デジタルセラピーへの応用を目指し、オウル大学と研究を進めています。

さらにこの仕組みは、自閉症における行動計画の柔軟性の測定や、言語障害、成人のADHD、脳損傷の評価にも応用できる見込みです。ジュネーブの提携機関では、パーキンソン病やアルツハイマー病など加齢性疾患の早期発見への活用も検討されています。

なぜ重要か

ADHDは世界の子どもの約6%に影響を与えているとされますが、客観的な診断基準の確立は長年の課題でした。私たちは、この研究の巧みな点は「日常の再現」にあると考えます。何もない無機質な部屋ではなく、テレビの音に邪魔される日常空間をVRで再現したことで、より実態に近い行動データを抽出できています。

子どもにとっては検査自体が楽しい体験になるため、受診時の心理的ハードルを大きく下げる効果も期待できます。

一方で、今回の実験は被験者が約70名と小規模にとどまっています。医療現場で標準的な診断支援ツールとして定着するには、より大規模な治験と、機器装着時の負担軽減が欠かせません。それでも、主観的な問診を補完する客観データとして、ゲームを活用したデジタル診断の可能性を大きく広げる一歩だと言えます。

情報源 (2)

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    sciencedaily.com(新しいタブで開きます)原文sciencedaily.com
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