英政府、AI研究支援に1億ポンド超を投じるも法制化は見送り
英国政府はAI規制方針を発表し、1億ポンド超の追加資金拠出を明らかにした。うち9000万ポンドを9カ所の研究拠点設立に、1000万ポンドを既存規制機関の強化に充てる。包括的な法規制を進めるEUとは対照的に、英国は独自の新法制定を急がず、柔軟な監督でAI開発者を呼び込む方針だ。

欧州連合が世界で最も厳しい包括的 AI 規制の導入を進めるなか、イギリス政府は真逆のアプローチを選びました。新たな法律は作らず、まずは研究開発に巨額の予算を投じる方針です。
イギリスの科学・イノベーション・技術省は、昨年実施した AI 規制白書へのパブリックコメントに対する公式回答を発表しました。あわせて 1 億ポンド(約 186 億円)を超える追加資金を拠出することを明らかにしています。
予算の 9 割を開発に配分、規制側の強化は後回し
今回の追加資金のうち、大半を占める 9000 万ポンドは国内 9 か所の AI 研究拠点の新設に充てられます。医療、数学、化学などの重点分野における国内イノベーションを 5 年間にわたり支援する計画で、各拠点には 720 万から 1000 万ポンドが割り振られます。
さらに、信頼できる AI ソリューションの実用化に向けた 21 のプロジェクトに 1900 万ポンド、教育やクリエイティブ分野での責任ある AI のあり方を探る研究に 200 万ポンドが拠出されます。
対照的に、AI のリスク監視や法執行を担う規制機関のスキル向上に向けた予算は、わずか 1000 万ポンドにとどまりました。しかも、この 1000 万ポンドの基金は現時点でまだ立ち上げすら完了しておらず、制度設計を進めている段階とされています。
新法制定は見送り、既存の各省庁に判断を一任
今回の発表で最大の焦点となったのは、イギリス政府が AI に特化した新法の制定を急がない姿勢を維持した点です。ミシェル・ドネラン科学・イノベーション・技術相は、すぐに陳腐化するような拙速な法整備は避けるべきだと説明しています。
イギリスは包括的な法制度を新設するのではなく、通信庁や競争・市場庁といった既存の規制機関が、それぞれの担当分野で既存の法律を適用して個別に対処する方式を採ります。
政府はこれらの主要な規制機関に対し、AI への対応方針やリスク評価、向こう 1 年間の監視計画を 4 月 30 日までに公表するよう求めました。
なぜ重要か
AI 開発者やスタートアップにとって、イギリスのこのスタンスは非常に魅力的な参入機会に見えます。欧州の AI 法が課す重いコンプライアンス負担を嫌う企業に対し、法的な足かせを増やさず、研究助成金を配ることで国内への誘致を図っているからです。
ただし、新法がないからといってリスクがゼロになるわけではありません。単一の統一ルールがない分、企業は金融、通信、競争政策など、各業界の規制機関がそれぞれ打ち出す方針を個別に読み解く必要があり、かえって見通しが立ちにくくなる懸念もあります。
私たちの見解として、イギリスのこの戦略は EU との明確な差別化を狙った現実的な賭けに見えます。短期的にはハイテク企業の呼び込みに有利に働く可能性がありますが、1000 万ポンドというわずかな支援しか受けていない既存の規制当局が、急速に進化するフロンティアモデルの暴走をどこまで抑え込めるかには強い不安が残ります。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com