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研究

グラーツ工科大、AIを活用したカスタムタンパク質設計手法を開発

公開 拡散指数 31

グラーツ工科大の研究チームは、医薬品や生分解ポリマー向けの人工タンパク質を計算機上でカスタム設計する新手法を発表した。パラメトリック設計とAIを組み合わせ、数万通りの構造候補から活性中心に適合する分子を効率的に構築できる。

グラーツ工科大、AIを活用したカスタムタンパク質設計手法を開発
画像:phys.org

自然界にない酵素をゼロから作り出す手法が、また一歩前進しました。

オーストリアのグラーツ工科大学(TU Graz)の研究チームが、ERCプロジェクト「HelixMold」を通じて、医薬品原料の合成やバイオポリマーの分解に向けた人工タンパク質の計算機設計手法を確立しました。

活性中心から逆算してタンパク質を成形する

従来のタンパク質設計は、既存データベースから既知の断片を取り出し、モンテカルロシミュレーションなどで組み替える手法が主流でした。しかし、部分が似ていても全体がどう折りたたまれるかを予測するのは至難の業でした。

プロジェクトを率いたGustav Oberdorfer氏らは、1953年にフランシス・クリックが提唱した原子配置の直接計算に着想を得た「パラメトリック設計」を採用しました。これにより、わずかに形状が異なる数万種類もの基本骨格をコンピュータ上で生成できるようになりました。

シミュレーションでは、生成された構造の中から化学反応を担う「触媒活性中心」を幾何学的に収容できるものを特定します。最適な骨格が見つかると活性中心を固定し、専用ソフトウェアで周囲のアミノ酸を相互作用エネルギーが最小になるよう成形していきます。

さらに、柔軟で予測が外れやすい「ループ領域」の破綻を防ぐため、チームのFlorian Wieser氏は数千件の実測構造で学習させたAIを開発しました。このAIが設計プロセスの品質管理を担い、現実的なループ構造かどうかを判定します。

途中で起きたAI革命と柔軟な方針転換

プロジェクトの進行中、AlphaFoldやRoseTTAFold Diffusionといった生成AIツールが急速に台頭しました。

Oberdorfer氏によると、これらAI手法の登場により、当初重視されていたパラメトリック設計自体の重要度は相対的に下がったといいます。しかしチームはその変化を歓迎し、新しい機械学習手法を積極的に取り入れることで計算の効率化を果たしました。

自然界にあるタンパク質を探して改変する時代から、起こしたい化学反応に合わせて分子全体を逆算設計する時代へのシフトが、まさに形になりつつあります。

なぜ重要か

繊維素(セルロース)の分解や難度の高い医薬品合成において、天然の酵素では耐熱性や効率が足りないケースは珍しくありません。

今回の手法は、あらかじめ目的の化学反応を定義し、その活性部位を支えるためのシェルをコンピュータでゼロから仕立てられる点に大きな強みがあります。特定の目的に特化したバイオ触媒の設計速度は飛躍的に上がるはずです。

私たちは、この研究の最大の賢さは「技術の柔軟な取り込み」にあると考えます。当初の独自手法に固執せず、生成AIの進化を品質評価や構造生成の加速に素早く組み込んだ判断は実用的です。

ただし、画面上でエネルギー最小値を達成した構造が、実際の生体発現系で狙い通りの触媒活性を維持できるかは別問題です。デジタル空間の設計精度がどれほどウェットな実験の歩留まりに結びつくかが、実用化に向けた最大の試金石になりそうです。

情報源 (1)

  1. [1]
    phys.org(新しいタブで開きます)原文phys.org

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