Spotify の AI 音楽放置に対抗:有志が「偽アーティスト」追跡サイトを公開
Spotify が AI 生成楽曲のラベル表示を徹底しない中、有志が SoullessMusic や SlopTracker などの検知ツールを立ち上げた。追跡対象の AI 歌手だけで年間推定 570 万ドルを稼ぎ出している。ただし検知モデル自体にも誤判定のリスクは残る。

ラスベガス出身のR&B新星とされるSlime Dotは、Spotifyで月間10万人以上のリスナーを抱え、Drakeと並んだ写真までSNSに投稿していました。5月に米GQ誌が彼女を取り上げた際、本人はAI疑惑を真っ向から否定し、GQも当初は噂を否定する記事を掲載しました。
しかしその後、GQは記事末尾に訂正文を追加しました。彼女は実在しないAIアバターだったと認めたのです。
YouTubeなど他社がAI生成コンテンツのラベル表示を進める一方で、Spotifyはいまだ明確な自動識別ラベルを表示していません。公式が動かないなら自分たちで暴くしかないと、個人開発者たちが立ち上がりました。
AIスロップを追跡する有志のツールたち
開発者のGraeme Fulton氏が立ち上げた「SoullessMusic.com」は、Spotify上に潜むAIアーティストを追跡するデータベースです。オープンソースの検出モデルSONICSや、ボコーダーの指紋検出器、楽曲のメタデータ解析を組み合わせて判定しています。
もう一つのツール「SlopTracker」では、SpotifyのURLを入力するだけで判定が行えます。前述のSlime Dotの楽曲「Fully」を解析したところ、Sunoで生成された確率が95パーセントと判定されました。
問題はリスナーが騙されることだけではありません。莫大な再生報酬が不当に吸い上げられています。SoullessMusicの試算によると、同サイトが捕捉している少数のAIアーティストだけで年間推定570万ドルを稼ぎ出しています。トップのAIアーティストであるmikeeysmindは、単独で年150万ドルを手にしていました。SlopTrackerの試算では、公式プレイリストに入り込んだAI楽曲により、人間の音楽家から毎秒0.1188ドルが奪われている計算になります。
亡くなった実在のミュージシャンの名義でAI曲を配信して再生数を稼ぐ詐欺や、毎週何時間もの「イランジャズ」を量産して文化保護を騙るアカウントなど、悪質な事例も続出しています。Spotify側は認証バッジやAIクレジット表記などの対策を進めていると説明しますが、一般のリスナーから見れば野放しに近い状態です。
なぜ重要か
私たちは、この問題の本質はSpotifyのプラットフォームとしてのインセンティブの歪みにあると考えています。
リスナー目線で見れば、月額料金を払っているのに人間の感情がこもった作品ではなく、数秒で大量生成された機械の粗悪品を掴まされるリスクが高まっています。そして本業の音楽家にとっては死活問題です。ストリーミングの分配金プールは有限の奪い合いであり、プロンプト一つで数千曲を量産できるAIアカウントに再生回数を奪われることは、ダイレクトな収入減を意味します。
競合のDeezerは4月、新規アップロード楽曲の44パーセントがすでにAI生成だと明かしました。SunoやUdioなどの生成ツールには聞き取れない電子透かしが埋め込まれているため、技術的にはSpotifyが本気を出せば高精度な検知とラベル付けが可能なはずです。
それにもかかわらず対応が後手に回っているのは、AI楽曲が普及してレーベルへの依存度が下がれば、長期的にはロイヤリティ支払いを圧縮できるという思惑が透けて見えます。しかし、真贋の判定を有志の開発者に押し付け、人間のクリエイターを疲弊させる姿勢は、音楽プラットフォームとしての信頼を根本から損なうリスクを孕んでいます。
情報源 (1)
- 404media.co(新しいタブで開きます)原文404media.co