Sakana AI、自律型ビジネス調査AI「Marlin」のβテスター募集 8時間自律思考し数十ページの戦略レポートを生成
Sakana AI は同社初の商用プロダクトとなる自律型 AI リサーチアシスタント「Sakana Marlin」を発表し、クローズド β テスターの募集を開始した。テーマを一度入力するだけで、人間の介入なしに最大 8 時間近く自律調査を行い、スライドと数十ページの詳細レポートを作成する。「仮想 CSO」として企業の高度な意思決定支援を目指す。

AI に調べ物を頼むとき、多くの人は数秒待って要約テキストを受け取る使い方に慣れています。しかし、経営会議にかけるような本格的な戦略レポートを作る場合、そうしたチャットボットでは太刀打ちできません。
Sakana AI は同社初となる商用プロダクト「Sakana Marlin」を発表し、クローズド β テスターの募集を開始しました。同社はこのツールを「仮想 CSO(最高戦略責任者)」と位置づけています。
使い方はいたってシンプルです。調査したいテーマをプロンプトとして入力するだけで、その後の人間の介入は一切不要。Marlin は最大 8 時間近くにわたって自律的に思考と調査を続け、構造化されたスライド資料と数十ページに及ぶ詳細レポートを作成します。
8時間自律思考する「仮想CSO」
通常なら数人のリサーチチームが数週間かけてまとめるような重厚な調査を、Marlin は数時間で完遂することを目指しています。
公開された出力サンプルからもその本気度が伝わります。第2期トランプ政権の通商政策が日本企業に与える影響を分析したレポートは全 61 ページ、16 のリスク要因とシナリオ分析を提示しています。また、国内金融機関への AI 影響を分析したレポートは全 78 ページに達し、組織の ROI ギャップや規制動向まで深く掘り下げています。
単にネット上のテキストを繋ぎ合わせた要約ではなく、エグゼクティブサマリー、複数の将来シナリオ、個別セクターごとの詳細データ、参考文献までが網羅された成果物が出力されます。
Marlin の最大の特徴は「時間をかけて深く考える」推論スケーリングにあります。推論効率の向上を短縮化ではなく、難問に多くの計算量を注ぎ込む方向へ振り向けるアプローチです。
AB-MCTSと「AIサイエンティスト」の融合
AI に 8 時間も自律稼働させると通常は脱線やハルシネーションが起きますが、Marlin は同社独自の 2 つの研究成果でこれを制御しています。
1 つ目が、NeurIPS 2025 でスポットライトに選出された「AB-MCTS(適応分岐モンテカルロ木探索)」です。思考の過程を木構造として扱い、有望な仮説を深掘りしつつ無駄な枝を切り捨てながら、何百何千回ものモデル呼び出しを自律的に繰り返します。得意分野の異なる複数モデルを協調させる点も特徴です。
もう 1 つが、Nature 誌に論文が掲載された「AI サイエンティスト」の知見です。アイデア創出から証拠集め、矛盾解消、レポート構造化までを行う科学研究の自律ワークフローを、ビジネス調査向けに落とし込んでいます。
現在、金融機関や事業会社の経営企画、コンサルティングファーム、シンクタンクなどを対象にクローズド β の参加者を募っており、期間中は無料で利用できます。
なぜ重要か
AI 業界全体で「推論時の計算量拡大」がトレンドになる中、Sakana AI はその計算リソースをチャットではなく、エンタープライズの重厚な戦略リサーチに振り向けました。このポジショニングは非常に賢明だと考えます。
企業の戦略担当者やコンサルタントにとって、最初の仮説検証とドラフト作成にかかる膨大な作業時間を丸ごと肩代わりしてくれる存在になり得ます。情報収集に追われていた時間を、成果物の妥当性判断や最終的な意思決定といった本来の仕事に充てられる価値は極めて高いはずです。
一方で、課題はファクトチェックのコストです。AI が 8 時間かけて組み上げた 70 ページ超のロジックを人間が精読・検証するのは、それ自体が高度な専門知識を要する作業です。提示された示唆をどこまで信頼して経営判断に落とし込めるか、検証性の担保が今後の本格普及における鍵を握ると見られます。
情報源 (1)
- sakana.ai(新しいタブで開きます)原文sakana.ai