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研究

Sakana AIの「ALE-Agent」、競技プログラミングAHCで804人に競り勝ち優勝

公開 拡散指数 36

Sakana AIは自社開発の「ALE-Agent」がAtCoderのヒューリスティック競技プログラミングコンテスト「AHC058」で1位を獲得したと発表した。4時間の競技中に約1,300ドルの計算資源と複数フロンティアモデルを活用し、作問者の想定を超えるアルゴリズムを自律的に考案。AIエージェントがリアルタイムの大規模最適化コンテストで人間のエキスパートを抑えて優勝したのは初となる。

Sakana AIの「ALE-Agent」、競技プログラミングAHCで804人に競り勝ち優勝
画像:sakana.ai

AIによるプログラミングといえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは定型的なアルゴリズム問題の解答や、エディタ上でのコード補完でしょう。しかし産業界の現場で本当に頭を悩ませているのは、物流網の経路配送や工場の生産スケジューリングといった、明確な正解が存在しない複雑な最適化問題です。

Sakana AIは自社開発のエージェント「ALE-Agent」が、AtCoder主催のヒューリスティック競技プログラミングコンテスト「AHC058」で優勝したと発表しました。参加した804人の人間を退けての1位獲得であり、リアルタイムの大規模最適化コンテストでAIが人間のエキスパートを破って優勝したのは世界初となります。

コンテストは2025年12月14日に4時間という制限時間で開催されました。課題は、リンゴを作る機械とそれを製造する上位機械のような、階層構造を持つ生産計画の最適化でした。一見すると親しみやすい設定ですが、背後にある数理モデルはサプライチェーンや製造ラインの工程管理と直結しています。

作問者の裏をかいた「仮想パワー」と大近傍探索

興味深いのは、ALE-Agentが作問者の事前の想定を超えたアプローチを自律的に編み出した点です。

AHC058の作問者は、貪欲法(Greedy)やビームサーチで全体の大枠を決め、焼きなまし法(Simulated Annealing)で細部を詰めていく解法を想定していました。しかしALE-Agentは、AIならではの膨大な試行錯誤を武器に独自のアルゴリズムを構築しました。

まず初期解の生成において、まだ稼働していない機械に対しても将来の価値を見越して評価点を与える「仮想パワー(Virtual Power)」という独自のヒューリスティクスを考案。さらに焼きなまし法の局所探索では、微小な修正にとどまらず、貪欲法を用いて計画の広範囲を大胆に作り直す3種類の大近傍操作を組み込みました。これにより、局所最適解に囚われることなくスコアを伸ばすことに成功しました。

さらに計算速度を極限まで高めるため、定数倍の高速化や事前計算テーブルの活用など、人間が手作業で行うには骨の折れる最適化を徹底的に実装。競技開始から2時間で初回提出を行い即座に暫定首位に立つと、強豪のyosupo氏とのデッドヒートを経て2時間半で再びトップを奪還し、そのまま逃げ切りました。

2つのフロンティアモデルと1300ドルの試行錯誤

この4時間の勝利を支えたのは、約1,300ドルの計算資源でした。内訳は約1,000ドルのAPI費用と、AWSなどのインフラ費用です。

エージェントはGPT-5.2(思考強度:高)を2,654回、Gemini 3 Pro Preview(思考レベル:高)を2,119回呼び出しました。複数のモデルを並行稼働させてコードを生成し、実行結果を分析して得られた知見を次の改善サイクルにフィードバックする仕組みを備えています。

作問者で世界ランカーの野地宏美氏(itigo)は、実験的直感を要する本問をLLMが解くのは困難だと予想していたものの、想定外の高度な焼きなまし法を自力で見つけ出したログを見て圧倒されたとコメントしています。AtCoderのAHC責任者である岩田陽一氏(wata)も、大胆な大近傍探索を導入した点を高く評価しました。

ただしSakana AI自身も、AIが常に人間を凌駕できる段階にはないと冷静に分析しています。ALE-AgentにとってAHCでの優勝は今回が初であり、算出された仮想レーティングは2592で、アクティブユーザー中66位相当にとどまります。

なぜ重要か

この成果の価値は、AIが単なる過去コードの模倣を超えて、未知の複雑系に対する「アルゴリズムの発見」に足を踏み入れた点にあります。

4時間で約1,300ドルというコストは、個人のホビー用途としては高額です。しかし、配送効率の1%改善や半導体配置の最適化で億単位のコストが動くエンタープライズ領域から見れば、数時間の計算資源とわずか数十万円で人間のトップ専門家を超えるアルゴリズムを探索できる仕組みは極めて実用的です。

また、単一のモデルに丸投げするのではなく、複数のフロンティアモデルを組み合わせ、試行錯誤の軌跡から教訓を抽出して自己改善するエージェント設計の有効性を示した点も業界に強い影響を与えます。

一方で、探索の成否が依然として試行回数の暴力に依存している側面もあり、モデルの当たり外れや費用対効果の管理は今後の課題となります。それでも、推論時スケーリングによってAIが実社会の複雑な数理最適化を自律解決できる未来が、いよいよ現実味を帯びてきました。

情報源 (1)

  1. [1]
    sakana.ai(新しいタブで開きます)原文sakana.ai

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