プロンプト1つで短尺動画を自動生成 GPT-3やDALL-E 2を組み合わせた「QuickVid」登場
元Metaのエンジニアが短尺動画の自動生成ツール「QuickVid」を公開した。単語を1つ入力するだけで、GPT-3による台本作成、DALL-E 2の画像生成、Googleの音声合成、フリー素材動画を自動で組み合わせて完成させる。コンテンツ制作の手間を劇的に減らす一方、粗製乱造への懸念も出ている。
動画の台本を書き、ナレーションを吹き込み、フリー素材を探して字幕をつける。ショート動画を1本仕上げるだけでも、クリエイターには多大な手間がかかります。
元MetaのエンジニアであるDaniel Habib氏が公開した「QuickVid」は、そうした制作フローをプロンプト1つで自動化するWebツールです。
既存のAIツールを数珠つなぎにした自動生成ライン
QuickVid自体は新しい動画生成モデルを開発したわけではありません。既存の有力な生成AIサービスをうまく組み合わせ、定型的なショート動画を素早く組み立てる点に特徴があります。
使い方はいたってシンプルです。ユーザーがキーワードや短いプロンプトを入力すると、まずOpenAIのGPT-3が動画用の台本を作成します。
続いて台本から抽出したキーワードをもとに、Pexelsのフリー素材ライブラリから背景動画を自動選定。さらにDALL-E 2で関連画像を生成して画面に重ねます。
ナレーションにはGoogle Cloudの音声合成を採用し、自動字幕とBGMを付加して1本の動画として書き出します。Facebook Liveの基盤開発に関わっていたHabib氏が数週間で開発したもので、月額10ドルで提供されています。
クオリティのばらつきとスパム量産の懸念
ただ、現時点での動画のクオリティは粗さが目立ちます。Pexels頼みの背景映像はテーマと無関係なものが選ばれやすく、DALL-E 2の画像も文字化けや比率の崩れが見られます。
それ以上に深刻なのが、コンテンツの審査体制と著作権リスクです。差別的な単語はOpenAI側のフィルターで弾かれるものの、一部のデリケートな社会問題では偏った主張を含む動画が生成されてしまう事例も確認されています。
Habib氏は投稿前の確認はユーザー自身の責任であるとし、著作権訴訟が起きてOpenAIが使えなくなってもStable Diffusionなどのオープンソースに切り替えればいいと強気な姿勢を崩していません。
しかし、ワンクリックで動画が作れるようになれば、TikTokやYouTube Shortsが中身の薄いスパム動画で埋め尽くされる危険性は否定できません。
なぜ重要か
私たちは、QuickVidが「APIの組み合わせだけで成立する動画量産ビジネス」の現実的な到達点を示したと考えています。
大手研究所が重厚な動画生成モデルの開発を進めるなか、既存のテキストや画像AI、素材サイトを束ねることで、最小限のコストで動くプロダクトを作り上げた嗅覚は非常に鋭いと言えます。
自身のブランディングを大切にするクリエイターが今すぐ導入するには素材の違和感が強すぎますが、アフィリエイトやアクセス稼ぎを狙うまとめアカウントにとっては強力な武器になります。
結果として試されるのは、YouTubeやTikTok側のアルゴリズムです。露骨なディープフェイクとは異なり、無難な素材を組み合わせた低品質なAI動画が溢れかえったとき、プラットフォームがどう線引きするのか。クリエイター支援という名目の一方で、プラットフォームの健全性を揺るがす火種を抱えています。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com