Prime Video、口の動きを声に合わせるAIリップシンク機能を導入
Prime Videoは吹替音声に合わせて俳優の口の動きをAIとVFXで自然に同期させる技術を発表した。世界的人気ドラマ『マクストン・ホール』のシーズン1・2の英語吹替版で提供が始まっており、12月9日配信のシーズン3にも適用される。今後は他作品への展開も予定している。

海外ドラマを吹替で見ているとき、セリフはすでに終わっているのに画面内の俳優の口がまだ動いている違和感に集中を削がれた経験はないだろうか。
Amazon はこの長年の課題を解消するため、Prime Video に AI と視覚効果(VFX)を活用したリップシンク(口パク一致)吹替技術を導入した。
本機能は、Prime Video で歴代最も視聴された海外オリジナルシリーズ『マクストン・ホール』のシーズン 1 およびシーズン 2 に先行して実装された。
俳優の口元を人間の吹替音声に合わせる仕組み
この技術は音声を AI で生成するのではなく、プロの声優が吹き替えた人間の音声に合わせて、画面上の俳優の口の動きを AI と VFX で後処理して同期させるものだ。
従来のような口元のズレによる違和感をなくし、視聴者がストーリーに没入できるように設計されている。
現在、世界各国で英語吹替版を対象に提供が始まっており、モナ・カステンによる 2018 年の小説『Save Me』を原作とする第 3 シーズン(最終シーズン)が 12 月 9 日に配信される際にも、同様に対応するという。
Prime Video および Amazon MGM Studios のテクノロジー担当バイスプレジデントである Raf Soltanovich 氏は、クリエイターの表現意図を守る監修のもとで運用されていると強調しており、今後は対象作品を順次拡大していく方針を明らかにしている。
なぜ重要か
Amazon の今回のアプローチは、映像業界における生成 AI の活用法として非常に現実的かつ巧妙だと評価できる。
現在のハリウッドでは、俳優や声優の権利を脅かす完全な音声生成 AI に対して強い警戒感がある。その中で Amazon は、声優の仕事を奪うのではなく人間の音声を維持し、映像側の違和感を解消するツールとして AI を位置づけた。
ユーザーにとってもメリットは分かりやすい。字幕を追い続けるのが面倒だったり、口元の不自然さが理由で非英語圏のドラマを敬遠していた層にとって、視聴のハードルが大きく下がる。
一方で、撮影後の俳優の口の動きをアルゴリズムで改変することに対しては、演技の真正性や肖像の取り扱いをめぐる議論の火種が残る。どこまでを映像表現の補正と見なし、どこからを演技の改変と捉えるかは今後も問われるだろう。
とはいえ、配信大手が世界各国のローカル作品をグローバルに展開する上で、言葉の壁を視覚的にも消し去るこの試みは、今後の配信プラットフォームの競争軸を変える可能性を秘めている。
情報源 (1)
- aboutamazon.com(新しいタブで開きます)原文aboutamazon.com