Perplexity、端末完結型AIエージェント「Computer」発表:推論コストゼロで機密を保護
Perplexityはローカル動作を基本とするAIエージェントフレームワーク「Computer」を発表した。軽量モデル向けに設計され、会話やツール実行が端末内で完結するため機密情報が外部に出ずAPI費用もかからない。高度な処理時のみユーザー承認のもとクラウドの最先端モデルに相談できる仕組みで、社内ベンチマークでは82.6%の精度を記録した。

機密文書や個人データをクラウドの AI に送信することには、常に情報漏洩のリスクと従量課金の API コストという二重のハードルが付きまとってきました。
Perplexity は 8 月 25 日、専用端末「Perplexity Portable Computer」向けに設計されたローカルファーストの AI エージェント「Computer」を発表しました。モデル、実行ハーネス、会話履歴、タスクの実行ログをすべてローカル端末上で完結させるアーキテクチャを採用しています。
Web 検索や外部ツール連携、より高度なクラウドモデルへのエスカレーションが必要な場合のみ、ユーザーの許可を得て外部と通信します。機密データが勝手に外に出ることはなく、推論コストもゼロに抑えられます。
小型モデルに合わせたハーネスの再設計
Qwen 3.8 27B や NVIDIA Nemotron 3.5 Lightning 30B などのオープンソースモデルは急速に進化しており、NVIDIA DGX Spark のようなローカル推論ハードウェアを使えば手元で十分に動作します。
しかし、Pi や Hermes のような既存の汎用エージェントハーネスは、長大なコンテキストや多数のツール定義を処理できる巨大なフロンティアモデルを前提としていました。端末向け小型モデルにそのまま適用すると、コンテキストの過負荷で破綻しやすくなります。
Perplexity の検証によると、Qwen 3.8 27B はカタログスペック上 260K トークンのコンテキストを扱えるものの、実際には 100K トークンを超えると精度が顕著に低下します。そこで Computer はコアプロンプトとツールを極限まで削り、データ分析や作図などの機能は必要な時だけ読み込んで破棄するモジュール設計としました。
また、Gmail や GitHub、Google カレンダーなどの連携機能についても、コンテキストを大量に消費する従来の MCP サーバー形式を廃止し、軽量な CLI(コマンドラインツール)に置き換える工夫を施しています。
安全性も強化されています。Pi や Hermes がデフォルトでユーザー権限のまま直接コマンドを実行するのに対し、Computer は OS レベルのサンドボックスを常時強制します。サンドボックスが機能しない環境では、ツールの実行自体を拒否する仕様です。
ベンチマークで示した圧倒的な効率性
NVIDIA DGX Spark 上で Qwen 3.8 27B を動かした比較テストにおいて、Computer は他のオープンソースハーネスに大差をつけました。
Perplexity 社内の 53 のナレッジワークタスクによる評価では、Pi の 77.6% や Hermes の 74.0% に対し、Computer は 82.6% を記録しました。同社が追加学習を施した「PPLX 27B」モデルを組み合わせると、スコアは 85.4% にまで向上します。
1266 件の Web 調査タスク(BrowseComp)では、自社の Search as Code インフラを活用することで正解率 66.7% を達成しました(Pi は 50.2%、Hermes は 43.9%)。さらに平均所要時間は 402.1 秒、消費トークン数は 85.2 万と、Hermes 比で時間を 61% 短縮し、Pi 比でトークン消費を 70% 削減しています。
PDF や画像を含む ParseBench-100 マルチモーダル評価でも、Computer は 65.1% のスコアを獲得し、Hermes(34.6%)や Pi(13.9%)を圧倒しました。特にチャート理解では 76.5% を記録した一方、レイアウト認識は全フレームワーク共通で 16.2% と依然として課題を残しています。
なぜ重要か
今回の発表は、クラウド向け巨大モデルの縮小コピーを端末に押し込むのではなく、端側ハードウェアと小型モデルの特性に合わせてソフトウェア側を再定義した点に大きな価値があります。
ユーザー視点では、財務データや開発中のソースコードといった社外秘情報を、API 費用を気にすることなく完全にローカル環境で処理できる道が開かれます。ハードウェアの初期投資は必要ですが、機密性の高い業務を日常的にこなすプロフェッショナルにとって試す価値は十分にあるはずです。
業界全体にとっても、MCP のような冗長な定義が小型モデルの性能を圧迫しているという指摘は示唆に富んでいます。機能を CLI に落とし込み、必要なスキルだけを動的にロードする Perplexity の設計思想は、今後のオンデバイスエージェント開発における標準的なアプローチになる可能性があります。
ただし、依然としてドキュメントのレイアウト解析に弱点があることや、DGX Spark クラスの強力な推論環境を前提としている点は制約と言えます。一般的なノート PC でどこまで同様の体験を提供できるかが、今後の普及に向けた試金石となりそうです。
情報源 (1)
- perplexity.ai(新しいタブで開きます)原文perplexity.ai