Perplexity、Computerに自己改善メモリ「Brain」とWeb公開機能を追加
PerplexityはComputerに自己改善型メモリシステム「Brain」を導入しました。過去のセッションを横断したコンテキストグラフを構築し、回答精度を25%向上させコストを13%削減します。さらにClaude Fable 5によるタスク編成やタスク途中のモデル切替、pplx.appへのWebサイト即時公開にも対応しました。

AIを使っていて最も億劫なことの一つは、新しいチャットを開くたびに背景事情を一から説明し直さなければならない点です。過去に指示したフォーマットや試行錯誤の履歴を、AIは簡単に忘れてしまいます。
Perplexityは同社の作業プラットフォーム「Computer」に大規模なアップデートを実施しました。核となるのは「Brain」と呼ばれる自己改善型の記憶システムで、さらに高度なタスクを実行する新モデルや、成果物を直接Webサイトとして公開する機能まで盛り込まれています。
夜間に自己改善する新記憶システム「Brain」
今回の目玉であるBrainは、これまでのプロンプト履歴をただ保管する仕組みではありません。過去のセッション、接続ツール、アップロードされたファイル、そして過去の意思決定を横断して、ユーザー専用のプライベートなコンテキストグラフを構築します。
ユニークなのは、このグラフが夜間に自動更新される点です。つまり、前日に何がうまくいき、何が失敗したのかをAIが夜のうちに復習し、翌日のタスクに反映させます。公式テストによると、過去の文脈が存在するタスクにおいて回答の正確性が25パーセント向上し、情報の再現率が16パーセント改善した一方で、コストは13パーセント削減されました。記憶された内容はすべて元データまで追跡可能で、不要なものは設定画面からいつでも削除できます。
作業の実行役として、複雑な多段階タスクの調整を担当するオーケストレーターにClaude Fable 5が選べるようになったほか、Opus 4.8の高速モードも追加されました。さらに便利なのが、タスクの途中でオーケストレーターのモデルを切り替えられるようになったことです。難易度の高い推論だけを上位モデルに任せ、その後の文章調整や反復作業は安価なモデルに切り替えるといった運用が、会話を最初からやり直すことなく行えます。
未公開企業の財務データとWebサイトの即時公開
情報の入り口と出口も大きく拡張されました。
調査機能では、Forge Globalが提供する未公開企業の財務データが利用可能になりました。追加の契約や設定を行うことなく、資金調達履歴や想定評価額、セカンダリ市場での取引価格といった非公開企業の動向をComputer上で直接分析できます。
成果物の出力としては、Computer上で構築したWebサイトをワンクリックで公開できるようになりました。pplx.appのURLで即座に公開できるほか、Vercelと連携して自前のカスタムドメインへデプロイすることも可能です。公開範囲は自分のみ、特定ユーザー、組織全体、完全公開から選べ、組織の管理者が外部への公開を一括で禁止する設定も用意されています。
このほか、Mac版アプリでのアカウント切り替え機能や、モデル別の利用状況を可視化する分析機能、トップページメニューの整理などが同時に導入されました。
なぜ重要か
Perplexityの今回の動きは、AI検索ツールから「文脈を理解し続ける自律型ワークスペース」への明確な脱皮を示しています。
アナリストやリサーチャー、個人開発者にとって、すぐに試す価値のあるアップデートと言えます。これまで入手が難しかった未公開企業の財務データを自然言語で横断検索できるメリットは大きく、生成したレポートを即座にVercel経由で公開できるワークフローは、モックアップ作成や社内ダッシュボードの共有を劇的に早めます。ただし、生成されたWebサイトはあくまで簡易的な共有やプロトタイプ向けであり、大規模なプロダクション開発をそのまま代替できるわけではない点には留意が必要です。
業界全体から見れば、モデル自体の巨大化を競うのではなく、コンテキストの整理と非同期処理による効率化に焦点を当てた点が極めて合理的です。夜間にコンテキストグラフを更新することで、ユーザーが作業する日中のレイテンシとAPIコストを抑えながら精度を高める設計は、実用性を重視した見事なアプローチと言えます。
一方で、このシステムを使い込むほどユーザーの業務履歴がプラットフォーム内に深く定着するため、他社サービスへの乗り換えは一段と難しくなります。自社の業務ノウハウをPerplexityのグラフ構造に預けることに見合うセキュリティとガバナンスが保たれているかどうかが、企業導入における現実的な判断基準になるはずです。
情報源 (1)
- perplexity.ai(新しいタブで開きます)原文perplexity.ai