OpenAI告発者の遺体解剖結果が公表:他殺の証拠はなく自殺と断定
サンフランシスコの監察医はOpenAIの元告発者スーチル・バラジ氏(26)の公式解剖報告書を公表し、自殺と結論づけました。現場のドアは内側から施錠されており、他殺の証拠は見つかりませんでした。これにより、報復による暗殺を主張していた陰謀論は否定された形です。

昨年後半に波紋を広げた元 OpenAI の内部告発者、スチル・バラジ(Suchir Balaji)氏の急逝について、公的な検視結果がようやく公表されました。
サンフランシスコ市検視局は金曜日、26 歳だったバラジ氏の死因を自殺と結論付ける正式な検視報告書を発表しました。他殺や事件性を示す証拠は一切確認されませんでした。
バラジ氏が亡くなった直後から、ネット上では同氏が OpenAI に対する報復として暗殺されたのではないかという陰謀論が飛び交っていましたが、科学的な調査結果がその憶測を否定する形となりました。
現場の状況と薬物検査の詳細
報告書によると、バラジ氏は昨年 11 月 26 日、サンフランシスコのロウアー・ヘイト地区にある自宅アパートの浴室で、鏡の前に倒れているのを発見されました。
死因は自ら額を撃ったことによる銃創でした。使用されたグロック拳銃は、彼が亡くなる 2 年近く前に自身で購入し、法的に登録していたものでした。また、自宅のパソコンには直前に脳の解剖学について検索した履歴が残されていました。
現場は完全な密室でした。アパート 4 階の部屋の唯一のドアは内側から施錠されており、窓も約 4 インチ(約 10 センチ)しか開かない構造で、外部からの侵入は不可能な状態でした。
室内に争った形跡はなく、防犯カメラや電子鍵のログにも第三者が立ち入った記録はありませんでした。毒物検査では、血中アルコール濃度が法定基準値の 2 倍を超える 0.178% に達していたほか、高濃度の GHB(中枢神経抑制剤)が検出されています。
広がった陰謀論と遺族の主張
この件が大きな騒動に発展した背景には、バラジ氏が直前にニューヨーク・タイムズ紙で OpenAI の著作権侵害問題を告発し、裁判での証言を予定していたという経緯があります。
死後、右派コメンテーターや暗号資産支持者らが他殺説を煽り、イーロン・マスク氏も SNS 上で「自殺とは思えない」と投稿するなど、憶測が拡大しました。
バラジ氏の両親は OpenAI による殺害を疑い、死因記録の開示を求めて市を提訴していました。母親は独自検視で後頭部を撃たれていたと主張しましたが、遺族側の弁護士はその主張を裏付けるものではないと見解の相違を示していました。
一方で、母親は捜査員に対し、彼が最近強いストレスを抱えており、退職して求職活動中だったと認めていました。父親も告発後に強い不安と恐怖を感じていたと証言しています。
なぜ重要か
今回の報告書は、ソーシャルメディア上で無責任に増幅された陰謀論に対し、客観的な事実をもって終止符を打つものです。
巨大テック企業を相手に告発を行うプレッシャーは、26 歳の若者にとって想像を絶する重荷でした。孤立感、失業、そして訴訟に関わる恐怖が重なり、精神的に追い詰められていた実態が浮かび上がってきます。
ネット上では暗殺劇のような物語が消費されがちですが、私たちは、告発者が直面する本当の危機はそうした陰謀ではなく、精神的な孤立と生活基盤の崩壊にあると考えます。
AI 開発の倫理を巡る議論が白熱するなか、組織の不正や懸念を声を大にして訴えるエンジニアを、社会や法制度がいかに保護し、メンタルヘルスを支えていくべきかという重い課題を突きつけています。
情報源 (1)
- sfstandard.com(新しいタブで開きます)原文sfstandard.com