OpenAIとThrive、Codexで「自己改善する税務AI」を開発:6週間で精度が急上昇
OpenAIとThrive Holdingsは、会計事務所ネットワークCrete向けに開発した「Tax AI」の成果を発表しました。税理士の修正履歴を評価データに自動変換し、Codexが自律的にコードを修正する仕組みを構築。7000件の申告書処理を通じ、75%の精度基準を満たした割合が運用開始時の25%から6週間で86%に急上昇しました。

確定申告の時期、会計士にとって最大の負担は計算そのものよりも泥臭いデータ入力です。中規模以上の申告書になると、手書きのメモやメール、前年の控えを突き合わせるだけで、1件あたり8時間もかかることがあります。
このボトルネックを解消するため、OpenAIとThrive Holdingsは共同で「Tax AI」を開発し、米国の会計事務所ネットワークCrete(30社以上)に導入しました。今シーズンだけでフォーム1040および1041を中心に7000件の申告書を処理。税務処理にかかる時間を約3分の1削減し、処理能力を約50%向上させ、最大97%の精度で申告書の下書きを作成しました。
しかし、この取り組みで最も注目すべきは作業時間の削減ではなく、システム自体が自律的にコードを修正して賢くなっていく「自己改善ループ」にあります。
専門家の修正をAIの教材に変える
リリース当初、Tax AIの出来は決して良いとは言えませんでした。記入項目の精度が75%に達した申告書は全体のわずか25%に過ぎませんでした。ところが、わずか6週間後にはその割合が86%にまで急上昇し、90%や100%の精度に達する割合はさらに速いペースで伸びました。
当初はW-2や1099といったシンプルな書類から始まり、次第にK-1や不動産所得のスケジュールEなど、複雑な書類へ対応範囲を広げていきました。
これを可能にしたのが、人間の介入を構造化データとして記録する仕組みです。会計士がTax AIの出力結果を修正すると、システムはAIの予測値と最終確定値の差分を記録し、元の添付書類にまで遡る証跡(トレース)を保存します。そして「特定の項目を繰り返し見落とす」といったパターンを自動で分類し、専用の評価テストセット(eval)へと変換します。
Codexが自分でバグを調査し、PRを出す
テストセットが生成されると、次はCodexの出番です。
Codexは単に出力結果を見るのではなく、トレース、リポジトリのコード、スキーマを横断して調査します。抽出パターンのミスなのか、書類の選択ミスなのか、それとも税務エンジンへのマッピング漏れなのか、根本原因を特定します。
原因が分かれば、Codex自らがコードを修正し、ターゲットテストとリグレッションテストを実行。問題がなければ人間のエンジニアが確認するためのプルリクエスト(PR)を作成します。人間がいちいちプロンプトを手作業でいじることなく、日常の業務データから自律的に改善が進むサイクルを築いたわけです。
なぜ重要か
私たちが考えるこの事例の最大の意義は、現場で使われるAIエージェントの完成度を「出荷時」ではなく「運用のループ」で勝負させた点にあります。
開発者やエンタープライズにとって、非常に参考になるアプローチです。従来、現場の修正作業はただのやり直し作業で終わっていました。しかしそれを構造化されたテストに落とし込み、Codexに修正タスクとして渡すことで、日々の業務そのものがシステムの開発リソースになります。法務、監査、医療など、高度な専門性が求められる領域ほど、この設計思想は強力な武器になるはずです。
業界全体にとっても、受託開発やバーティカルSaaSのあり方を揺るがす動きと言えます。エンジニアが手動でチケットを消化するのではなく、AIが自ら障害を分析してPRを出す時代が現実になりつつあります。
ただし、このループを回すには極めて堅牢な評価基盤とテスト環境が不可欠です。検証が甘いまま自己改善を進めれば、予期せぬ領域で重大な不具合を生むリスクもあります。自動生成されたPRを人間がどこまで厳格にレビューできるかというガバナンスの設計が、今後の成否を分けるポイントになりそうです。
情報源 (1)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com