Sora 2で「ブレイキング・バッド」俳優の無断ディープフェイク、OpenAIが謝罪
OpenAIと米俳優組合SAG-AFTRA、俳優ブライアン・クランストン氏が共同声明を発表した。本人の同意なくSora 2で生成された偽動画に対し、OpenAIは陳謝した上で肖像保護の安全策を強化すると表明。組合側は法整備の必要性を改めて訴えた。

『ブレイキング・バッド』の主演で知られる俳優ブライアン・クランストンは、マイケル・ジャクソンと自撮りをした覚えなどありません。しかし、OpenAIの動画生成AI「Sora 2」の中では、それが現実のように再生されていました。
これを受け、クランストン、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)、大手タレントエージェンシー、そしてOpenAIは共同声明を発表しました。OpenAI側は肖像と音声のオプトイン方針に関するセーフガードを強化したことを明らかにしています。
許可なきディープフェイクへの謝罪
先月Sora 2がリリースされて以来、ハリウッドの俳優や映画スタジオ、エージェントは自らの姿が無断で動画生成に使われるのではないかと強い危機感を募らせていました。
クランストンはその懸念が的中した形となりました。本人はSoraでの肖像利用に一切同意していなかったにもかかわらず、生成動画がタイムラインに出回ってしまったのです。
共同声明の中でOpenAIは、これらが意図しない生成だったとして遺憾の意を表明しました。すべてのアーティストや個人は自らが模倣されるかどうかを決定する権利があると再確認し、ポリシー違反の報告には迅速に対処すると述べています。
声明には過去にOpenAIの権利保護の甘さを批判していたCAAやUTAといった大手エージェンシーも名を連ねました。クランストン自身は改善に感謝を示したものの、OpenAIはアプリ内部でどのような技術的変更を加えたのかについては具体策を明かしていません。
オプトアウトの限界と法制化への動き
Sora 2をめぐるトラブルは今回が初めてではありません。
OpenAIは当初、著作権者に対して「嫌なら申請して除外してもらう」オプトアウト方式を採用していました。しかし、ナチス風のスポンジボブといった問題動画が拡散して強い批判を浴び、肖像と同様のオプトインモデルを軸とした厳格な制御へと方針転換を余儀なくされた経緯があります。
クランストンの件はひとまず手打ちとなりましたが、SAG-AFTRAのショーン・アスティン会長は、企業の自主規制だけでは不十分だと指摘します。
アスティン氏は、複製技術による大規模な不正流用から表現者を守るには強力な法的枠組みが不可欠であると強調し、米連邦議会で審議されている「NO FAKES法」の成立を改めて訴えました。
なぜ重要か
AI動画の精度が上がるほど、「作られてから消す」という後手後手の対応は通用しなくなります。
一般ユーザーやクリエイターにとって、本人の事前合意がない限り生成を禁じるオプトイン原則の徹底は死活問題です。放置されれば、誰でも身に覚えのないディープフェイクの被害に遭い、立証と削除要請に追われることになります。
OpenAIがSAG-AFTRAや大手芸能事務所と正面衝突せず、素早く共同声明を出して沈静化を図ったのは賢明な立ち回りと言えます。昨年の長期ストライキを経て団結を強めたハリウッドと法廷闘争になれば、サービス自体の存続が危うくなるからです。
ただし、具体的なフィルターの仕組みを公表していない点を見る限り、裏側ではプロンプトのブラックリスト追加など場当たり的な対応にとどまっている懸念も拭えません。法的な罰則を伴うNO FAKES法のようなルールが定着しない限り、プラットフォーム間の競争の中で安全対策が骨抜きにされるリスクは常に残ります。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com