OpenAI、防衛特化モデル「GPT-5.6-Cyber」提供開始:高度な脆弱性検証の成功率が95%に
OpenAIはセキュリティ研究者向けプログラム「Daybreak」を拡充し、特化型モデル「GPT-5.6-Cyber」を発表した。拒否フィルターを緩和し、高度なエクスプロイト開発要求への完了率は従来の1.5%から95.0%に急伸。Chrome V8のゼロデイなど多数の深刻な欠陥を実際に発見している。承認を受けた組織向けに限定提供される。

正当なペネトレーションテストを行っているにもかかわらず、AIから倫理的な説教を受けて脆弱性検証コードの生成を拒否された経験を持つセキュリティ研究者は少なくありません。
OpenAIはそうした現場のジレンマを解消すべく、セキュリティ支援制度「Daybreak」の拡充と、専用モデル「GPT-5.6-Cyber」を発表しました。
拒否率を劇的に引き下げた新モデル
GPT-5.6-Cyberは、基盤モデルGPT-5.6 Solをベースに、脆弱性調査やエクスプロイト検証向けの後学習を施した特化型モデルです。
従来のGPT-5.6 Solは、高度なサイバー攻撃シナリオに対して安全ガードレールが働き、要求の達成率はわずか1.5パーセントにとどまっていました。前世代のGPT-5.5-Cyberでも達成率は57.3パーセントでした。
今回発表されたGPT-5.6-Cyberは、エクスプロイトチェーン開発や権限昇格といった高度なタスクにおいて、95.0パーセントという極めて高い達成率を記録しています。
あわせてアクセス制度も二段階に再編されました。マルウェア解析やコード監査など一般的な防御タスクを担う「Daybreak Blue」と、GPT-5.6-Cyberを用いて脆弱性実証を行う「Daybreak Red」に分かれます。
実環境でChromeやカーネルの深刻な脆弱性を連続発見
このモデルの実力は、ベンチマーク上の数値にとどまりません。すでに実在する著名なソフトウェアから深刻な欠陥を洗い出しています。
代表的な成果が、Google Chromeが採用するJavaScriptエンジン「V8」のゼロデイ脆弱性です。コンパイラが整数変換時のチェックをスキップする不具合を突いて配列の境界外アクセスを行い、さらに別の脆弱性と組み合わせてヒープサンドボックスを突破する一連の手順をAIが導き出しました。この脆弱性はCVE-2026-15903としてGoogleに報告され、修正済みです。
さらにOpenAIは、主要モバイルOSにおける5件以上の権限昇格チェーン、主要データベースにおける3件のリモートコード実行脆弱性、そしてあるOSカーネルから400件以上の権限昇格バグを発見したと公表しました。
早期アクセスパートナーにはSpecterOps、SentinelOne、Palo Alto Networksが名を連ねています。なお、先日のHugging Face関連のインシデントに本モデルは一切関与していないとも明言されています。
なぜ重要か
一般向けの大規模言語モデルに課された厳格なガードレールは、防衛に携わるホワイトハッカーの手足まで縛っていました。特化モデルを切り出し、95パーセントの要求を通す環境を用意したOpenAIの判断は、実務現場にとって極めて合理的だと考えます。
実証コード作成の摩擦が激減することで、パートナー企業による脆弱性検証の速度は飛躍的に高まります。1つのカーネルから400件以上の権限昇格を発見したという実績は、人間が手作業で長期間かけていたコードレビューをAIが瞬時に代替し始めている証拠です。
一方で、このモデルが本質的に「デュアルユース(軍民両用)」であるリスクは消えません。善意の検証に使えるコードは、悪意ある攻撃者にとってもそのまま強力な武器になります。OpenAIは身元確認やログ監視、法的誓約を課していますが、認証情報の漏洩やアカウントの不正利用が起きれば被害は甚大です。
さらに深刻なのは、修正する側のキャパシティ問題です。AIが数日で数百件の未知の欠陥を発見しても、人間がそれをトリアージしてパッチを適用する速度には限界があります。修正の自動化が追いつかない限り、守る側の負担はかえって増大するおそれがあります。
情報源 (1)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com