OpenAI、米公務員2300万人向けにChatGPTライセンスを無料化
OpenAIと米総務局は複数年契約を発表した。通常1人月額15ドルのChatGPTライセンス料を無料にし、従量課金も50%割引とする。連邦や地方自治体の公務員約2300万人が対象で、サイバー防衛モデルDaybreak Blueも半額で提供される。期間は2028年末まで。

OpenAI が米国の公共部門を一気に取り込みにかかりました。
OpenAI for Government と米総務庁(GSA)は 9 月 10 日、複数年にわたる新たな包括契約を締結したと発表しました。対象期間は 2026 年 10 月 1 日から 2028 年 12 月 31 日までの 27 か月間。連邦政府だけでなく、州政府、地方自治体、先住民部族政府に所属する約 2300 万人の公務員が対象となります。
ライセンス料ゼロ、利用料も半額
今回の合意で最大の特徴は、通常 1 ユーザーあたり月額 15 ドルかかるライセンス費用を完全無料の 0 ドルにした点です。最低利用期間や最小発注数の縛りもなく、モデル利用料も通常価格の 50% オフで提供されます。
OpenAI はこれまでの連邦政府向け契約を通じてすでに 100 万人以上の政府職員に ChatGPT を提供していましたが、地方自治体や部族政府にまで同じ優遇条件を広げるのは今回が初めてです。
職員は GPT-6 Astra などのモデルを利用可能で、入力・出力データが OpenAI のモデル学習に使用されない ChatGPT Enterprise 相当のセキュリティ基準が適用されます。あわせて予算管理ツールや利用ガイド、研修プログラムを提供する政府アカデミーも展開されます。
現場での実績として、米疾病対策センター(CDC)では文献レビューを従来の数日から 30 分未満に短縮し、参加した専門家の 92% が生産性向上を報告。ジョージア州歳入省は税務書類の電子化作業を最長 2 週間から 15 分に縮小し、ローレンス・リバモア国立研究所では核融合研究の初期モデル開発を数か月から数時間に圧縮した例が紹介されています。
サイバー防衛モデル Daybreak Blue も 50% 引き
日常の事務作業だけでなく、セキュリティ分野でも踏み込んだ支援が用意されました。
審査を通過したすべての政府機関は、高度サイバー防御向けモデル「Daybreak Blue」を商用価格の 50% オフで利用できます。脆弱性の調査やマルウェア解析、防御ツールの開発を支援し、攻撃者より先に欠陥を発見することを狙います。侵入テストや脆弱性検証を行うレッドチーム向けには「Daybreak Red」へのアクセスも商用価格で提供されます。
これは OpenAI が前週に発表した、最前線の防衛者を対象とする 10 億ドル規模の世界的な助成イニシアチブを受けた動きです。グレッグ・ブロックマン社長も論考で官民連携の緊急性を訴えていました。
なぜ重要か
現場の公務員やIT担当者にとって、導入しない理由はほぼ見当たりません。財政に余裕がない地方自治体でも、月額基本料がかからず従量課金も半額であれば、議会への予算申請の壁を軽々とクリアできます。
市場競争の観点では、OpenAI による見事な囲い込みです。政府調達は手続きが極めて複雑で参入障壁が高い領域ですが、GSA という大元を押さえることで、全米 2300 万人規模の潜在ユーザーに一網打尽でアクセスできる土台を築きました。アンソロピックやグーグルなどの競合にとっては、公共分野への参入が一段と厳しくなります。
ただし、私たちは 2028 年末の契約満了後のリスクを警戒すべきだと考えます。ライセンス無償化はいわば究極のフリーミアム戦略であり、27 か月間で行政業務の根幹が ChatGPT に依存しきった場合、価格改定時の交渉力は政府側にほとんど残りません。国家の重要インフラやサイバー防衛を特定の一民間プラットフォームに深く依存させる危うさも、議論されるべき論点です。
情報源 (1)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com