OpenAIがEUのAIコンテンツ透明性規範を支持、二重透かしで出所追跡
OpenAIは欧州委員会が発表した「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」への支持を表明した。ChatGPTやAPIで生成された画像にC2PAメタデータとSynthID電子透かしの両方を適用しており、一般向けの検証ツールも提供している。

ネットで衝撃的な画像を見かけたとき、多くの人が真っ先に抱くのは「これ、AIが作ったのでは?」という疑念です。
デジタル空間の信頼崩壊を防ぐため、欧州委員会はEU AI法の重要ステップとなる「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」を公表しました。これを受け、OpenAIはいち早く支持を表明し、自社のコンテンツ追跡技術の現状を明らかにしました。
同社は2025年にも、米企業として初めてEUの汎用AI行動規範に署名しています。今回の規範策定にも初期段階から多数の関係者とともに参画していました。
C2PAとSynthIDによる二重防御
AI生成物に印をつける取り組みは、理屈は簡単でも実装には大きな壁があります。
OpenAIは2024年からDALL-E 3の画像にC2PAメタデータを付与してきました。しかしメタデータは脆弱で、スクリーンショットを撮ったり、SNSにアップロードしてフォーマットが変わるだけで簡単に消去されてしまいます。
そこで現在、ChatGPT、Codex、公式APIから出力される画像には二重の対策が施されています。
来歴を詳しく記録するC2PAクレデンシャルに加え、不可視のSynthID電子透かしを同時に埋め込む仕組みです。メタデータが失われても透かしで検知を維持する狙いがあります。
一般ユーザー向けには、画像にOpenAI由来の信号が含まれているかをブラウザ上で確認できる検証サイト(openai.com/verify)も公開されています。
透かしは万能ではないという現実
今回の発表で目を引くのは、技術の限界について率直に言及している点です。
OpenAI自身、コンテンツ来歴技術はまだ黎明期にあると認めています。悪意ある改ざんや過度な画像加工で透かしは劣化しますし、ラベル表示もプラットフォーム側が対応していなければ閲覧者には届きません。
そのため、透かしだけに頼るのではなく、悪用検知の分類器や肖像権保護、選挙対策などの安全機能を組み合わせる必要があると訴えています。EUに対しても、現行技術の実情に見合った柔軟な運用を求めました。
なぜ重要か
一般ユーザーや報道関係者にとって、openai.com/verifyのような検証手段が提供されるのは一歩前進です。ただし、加工や切り抜きで判定をすり抜ける余地は依然として残っており、今すぐ絶対的な真偽判定器として頼れるわけではありません。
業界全体から見れば、これは規制を先取りした巧みな防衛策です。制裁リスクの高い欧州で誰よりも早くルールに適合する姿勢を見せることで、事業継続の不確実性を消し去ろうとしています。同時に、高水準な二重の透かし対策を自ら標準化することで、追従する競合他社への参入障壁を引き上げる効果もあります。
自社規格に固執せず、競合であるGoogle由来のSynthIDと業界標準のC2PAを組み合わせた判断は現実的でスマートに映ります。しかし懸念されるのは、検証ツールの分断です。各AIベンダーが別々の検証窓口を作り、ユーザーが画像ごとにサイトを行き来するような運用は到底定着しません。プラットフォーム側でシームレスに表示される共通基盤が整わない限り、この透明性対策は大手ベンダーのコンプライアンス誇示にとどまるリスクを抱えています。
情報源 (1)
- openai.com(新しいタブで開きます)原文openai.com