本文へスキップ
IFAI

業界動向

ニューヨーク・タイムズがPerplexity提訴:有料記事の無断転載を主張

公開 拡散指数 44

米ニューヨーク・タイムズはAI検索のPerplexityを著作権侵害で提訴した。RAG機能を用いてペイウォール内の記事を無断取得・複製しているほか、ハルシネーションによる誤情報を同紙発と誤認させていると主張。同紙によるAI企業提訴はOpenAIに続く2社目となる。

ニューヨーク・タイムズがPerplexity提訴:有料記事の無断転載を主張
画像:techcrunch.com

メディアとAI企業の著作権争いが、モデルの事前学習から検索製品の現場へと本格的に飛び火しました。

ニューヨーク・タイムズは12月5日、AI検索スタートアップのPerplexityを相手取り、著作権侵害の訴訟を提起しました。同紙がAI企業を提訴するのはOpenAIとマイクロソフトに続き2社目です。今週はシカゴ・トリビューンも同社を提訴したばかりでした。

ペイウォール突破と「ハルシネーションのなすりつけ」

今回の訴訟は突然始まったものではありません。ニューヨーク・タイムズは1年以上前にPerplexityへ警告書を送り、過去18か月にわたって無断利用の停止を求めて交渉を続けていました。

訴状によると、Perplexityは許諾も対価の支払いもないまま、同紙のオリジナル報道を代替する商用製品を提供していると主張しています。特に問題視されたのが、チャットボットやCometブラウザアシスタントで使われているRAG(検索拡張生成)技術です。

同紙の広報担当者は、PerplexityがRAGを悪用して有料会員向けのペイウォールをリアルタイムですり抜け、有料コンテンツを勝手に自社ユーザーへ提供していると指摘しました。さらに、回答が原文のほぼ丸写しであるケースに加え、AIの誤情報(ハルシネーション)を同紙による報道だと偽って出力し、ブランドを傷つけているとも批判しています。

これに対しPerplexityの広報責任者であるJesse Dwyer氏はTechCrunchの取材に対し、報道機関はラジオやテレビ、ネット、SNSが登場するたびに訴訟を起こしてきたと反論。幸いそれが成功したことはなく、もし成功していれば今ごろ電信で会話していただろうと皮肉交じりに一蹴しました。

包囲されるPerplexityと分業の限界

Perplexityに対する法的包囲網は日増しに強まっています。昨年はウォール・ストリート・ジャーナルなどを傘下に持つニューズ・コープが提訴し、2025年にはブリタニカ百科事典、メリアム・ウェブスター、日本経済新聞、朝日新聞、Redditなどが相次いで抗議や法的措置の列に加わりました。

WiredやForbesも、クローリング拒否設定を無視して無断取得されたと告発しており、この挙動はクラウドフレアによっても確認されています。

Perplexity側も手をこまねいていたわけではありません。TIMEやFortuneなどを集めた広告レベニューシェア制度や、月額5ドルの利用料の80%をメディアに還元する「Comet Plus」を立ち上げ、ゲッティイメージズとも契約を結びました。

しかし、ニューヨーク・タイムズが求める規模には届きませんでした。同紙はAI自体を拒絶しているわけではなく、今年に入りアマゾンと大規模なコンテンツライセンス契約を締結しています。つまり、対価を払う相手とは手を組むが、タダ乗りは裁判で徹底抗戦するという明確な交渉戦略です。

なぜ重要か

Perplexityを日常の調査ツールとして重宝しているユーザーにとって、この裁判は対岸の火事ではありません。同サービスの強みは、良質なニュースや専門記事をリアルタイムに要約してくれる点にあります。仮に裁判所の差し止めが認められれば、信頼性の高い大手メディアの検索結果が次々と非表示になり、回答の質が劇的に落ちるリスクがあります。

業界全体にとっても、RAGが著作権侵害の免責符にはならないという現実を突きつけています。これまで多くのAI開発者は、モデルの重みにデータを焼き込まないRAGなら訴訟リスクが低いと考えてきました。しかし、ペイウォールの裏にある最新記事を要約して読者に代用させる行為が「市場代替」とみなされれば、検索系AI全体のビジネスモデルが根底から揺らぎます。

Perplexityの対応について、電信の時代を引き合いに出してメディアを揶揄する態度は、裁判戦略として得策ではないと私たちは考えます。海賊版書籍の学習を巡りAnthropicが15億ドルの和解金を支払う事態になったように、司法はAI側のフリーライドを許さない方向へ舵を切りつつあります。月額利用料の数ドルを分け合うような小手先のレベニューシェアでは、有料購読で成り立つ大手報道機関を納得させることは不可能です。

情報源 (1)

  1. [1]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com

毎日のAIピックアップ