NVIDIA、Omniverseを大幅刷新:生成AIとUnityに対応、3D検索も強化
CES 2023に先駆け、NVIDIAはOmniverseの大幅アップデートを発表した。生成AIツールやUnity向けコネクタに対応し、Ada Lovelace世代のGPUとDLSS 3で最大3倍の高速化を実現。自然言語で3D資産を検索できるDeepSearchも一般提供され、メルセデス・ベンツなどが工場設計のデジタルツインに活用している。

工場を建設する際、最も避けたいのは、稼働開始後にロボットアームの可動域が搬送ラインと干渉することに気づく事態です。
NvidiaはCES 2023に先駆けたバーチャルイベントで、シミュレーションおよび3D協調プラットフォーム「Omniverse」の最新アップデートを発表しました。生成AI技術の導入に加え、Unityゲームエンジンとの連携を実現し、さらにクリエイター向けRTX搭載ノートPCへのプリインストールを進めるなど、エコシステムの拡大を一気に加速させています。
メルセデス・ベンツが挑む工場のデジタルツイン
今回の発表では、電通やザハ・ハディド・アーキテクツに加え、メルセデス・ベンツなどの新規導入事例が明らかにされました。
メルセデス・ベンツは、ドイツに新設する自動車工場の完全な「デジタルツイン」をOmniverse上で構築する計画です。仮想空間内で製造ラインのシミュレーションと最適化を徹底的に行った上で実際の建設に着手し、完成後は実工場のセンサーデータをデジタルツインへ常時フィードバックして継続的な改善を図ります。
こうした協調作業の基盤となっているのが、Pixarが開発したオープンソース規格「USD(Universal Scene Description)」です。デモでは、世界各地にいる6人のアーティストが同一の3Dシーンをリアルタイムに同時編集する様子が公開されました。
生成AIによる資産検索とUnity連携
機能面での大きな進化は、正式提供が始まったAI機能「Omniverse DeepSearch」です。タグ付けされていない膨大な3Dアセットの中から、自然言語によるテキスト指示や2Dの参考画像を使って、直感的に必要なモデルを検索できるようになりました。
また、Unityとの接続に加え、Adobe Substance 3D Painter、Autodesk Alias、PTC Creo、KitwareのParaviewに対応するコネクタが追加され、Siemens NXからのデータ出力もサポートされました。
ハードウェア面では最新のAda Lovelaceアーキテクチャに最適化され、第3世代RTX技術やDLSS 3により、RTX 6000 AdaやL40を搭載したOVXシステム環境で最大3倍の性能向上を実現します。さらに、新しいNvidia StudioノートPCにはOmniverse Launcherが標準搭載され、数百万人のクリエイターが手軽に導入できるようになります。
なぜ重要か
アバター同士が交流するメタバースの熱狂が一服する中、仮想空間が真に実用的な価値を生む領域はどこなのかを、Nvidiaは産業シミュレーションという形で明確に提示しました。
ユーザーや製造業にとっての恩恵は極めて実務的です。自動運転の走行テストや工場の建設計画において、物理的に正確な仮想空間で事前に試行錯誤を繰り返すことで、現実世界での致命的な設計ミスや莫大な手戻りコストを大幅に削減できます。DeepSearchのように、過去の膨大な3D資産を即座に再利用できる点も現場の作業効率を大きく引き上げます。
今回の戦略は、Pixar由来のオープン規格USDを推進して業界標準のハブになりつつ、その膨大な演算処理を最新のRTX GPUや専用システムに依存させるという、Nvidiaらしい巧みな囲い込みだと考えられます。一般のノートPCへの展開を広げる一方で、本格的な大規模シミュレーションを回すには依然として最高峰のハードウェア投資が求められます。単なるクリエイター向けツールにとどまらず、産業インフラの基幹を押さえにいく同社の優位性は当面揺らぎそうにありません。
情報源 (1)
- venturebeat.com(新しいタブで開きます)原文venturebeat.com