NVIDIA、自律型エージェント「AVO」でARC-AGI-3を完全制覇
NVIDIAは汎用エージェント基盤「AVO」が対話型推論ベンチマーク「ARC-AGI-3」の公開データセットで100%スコアを達成し、全183レベルをクリアしたと発表した。長期記憶と監視機構を備え、競合VISTA比で行動数を12%削減。長期タスクにおけるシステム設計の重要性を示した。

フロンティアAIモデルの真価を引き出すのは、モデルそのものの賢さではなく、それを取り囲む「エージェント構造」かもしれません。
NVIDIAは自社開発の汎用エージェントフレームワーク「AVO(Agentic Variation Operators)」を用い、難関ベンチマーク「ARC-AGI-3」の公開データセット全25環境・183レベルを完全攻略し、100%のスコアを達成したと発表しました。単体テスト時のClaude Opus 5が記録した約30%というベースラインから、飛躍的な跳躍を見せています。
7日間GPUを自律チューニングした頭脳でゲームに挑む
AVOはもともと、ゲームを攻略するために作られたものではありません。本来の用途は、極めて高度な専門知識が求められるGPUカーネルの自律最適化です。
NVIDIA DGX B200システム上で、AVOは7日間にわたり自律稼働し、500以上の最適化方針を検証して40個のカーネルをコミットしました。その結果、マルチヘッドアテンションカーネルにおいてFlashAttention-4を最大10.5%、cuDNNを最大3.5%上回る性能を叩き出し、さらにわずか30分でGQA対応へと拡張してみせました。
開発陣はこのAVOの基本骨格をそのまま、ARC-AGI-3の環境へと接続しました。
ARC-AGI-3は、ルールも操作方法もゴールすら知らされないまま未知のゲーム環境に放り込まれ、試行錯誤しながら目標を推論して攻略していく極めて過酷なテストです。低層のCUDAコード最適化と未知のパズル攻略は、一見かけ離れていますが、「不完全な情報から仮説を立て、ツールを叩き、失敗から復帰して長期タスクを進める」という本質的なループは完全に一致していました。
画像ではなくテキストグリッド、そして「監視役」の存在
アプローチも独特です。競合システムであるVISTAが512x512のレンダリング画像を入力に用いたのに対し、AVOは64x64の純粋なテキストグリッドのみをモデルに渡しました。画像トークンは一切使っていません。
全183レベルをクリアするまでに要した環境アクション数は6,624回で、同じClaude Opus 5を用いたVISTAの7,542回と比較して約12%少ない手数で達成しています。
この効率性を支えたのが、過去の知見や試行結果を保持する「永続メモリ」と、エージェントが不毛なループに陥っていないかを外側から監視して軌道修正をかける「スーパーバイザー」の存在です。なお、一部の難関ステージでGPT-5.6 Solを試したところ、実時間ではSolが速く、手数の少なさではOpusが優れるという興味深い違いも見られました。
なぜ重要か
この成果は、AIエージェントの実用性を決めるボトルネックが、もはや基底モデルのパラメーター数だけではないことを明確に示しています。
開発者にとっての価値は極めて具体的です。次の世代のモデルを待たずとも、メモリ管理や状態監視といった「ハーネス(外郭システム)」の作り込み次第で、タスク完遂率を30%から100%へ引き上げられる道筋が示されたからです。
業界全体から見れば、NVIDIAがハードウェアと自律エージェントを垂直統合し始めている点が注目されます。DGX B200のような最高峰のハードウェアをAI自身が7日間かけて自律的にチューニングし、人間の最適化記録を更新できるなら、半導体の性能競争のルールそのものが変わります。
特定用途の世界モデルを無理に組むのではなく、汎用的な試行錯誤ループとしてエージェントを構築した設計は非常にスマートです。ただし、これほどの長期間・大規模な推論ループを回し続けるには膨大なAPIコストと計算資源が必要であり、一般の現場にそのまま降りてくるにはまだ時間がかかると考えられます。
情報源 (1)
- developer.nvidia.com(新しいタブで開きます)原文developer.nvidia.com