テンセントら、複数プレイヤーが同期する世界モデル「Multix」をオープンソース公開
テンセントと香港大学の研究チームがマルチプレイヤー対応の世界モデル「Multix」を公開した。各プレイヤーの視点を個別に生成しつつ環境と動作を同期させる仕組みで、階層的通信により計算コストを86%以上削減。4人分のデータ学習のみで最大10人まで拡張できる。

Multix(リポジトリ名:Multics)は、テンセントARCラボと香港大学の研究チームがオープンソース化したマルチプレイヤー対応の生成型世界モデルだ。同一の仮想空間内で複数のプレイヤーがリアルタイムにインタラクションする様子をシミュレートし、全員の動作や環境の変化を完全に同期させながら、プレイヤーごとの独立したカメラ視点を生成できる。
Genie 3 や混元 World など従来の世界シミュレーターは、基本的に単一プレイヤーの視線に特化しており、同じシーンに複数人を同時に存在させて辻褄を合わせるのが難しかった。Multix はその壁を破るモデルだ。
10人同時接続を実現した仕組み
複数人が同じ世界で動く映像を同時に生成しようとすると、アテンションの計算量が爆発的に増えてしまう。そこで研究チームは「階層的通信」と呼ばれる賢い仕組みを取り入れた。
通信をプレイヤー単位、グループ単位、全体単位の3層に整理し、プレイヤーの位置関係やカメラアングルに基づいて動的にグループ分けを行う。関係のある相手とだけ要領よく情報をやり取りすることで、アテンションの計算コストを86%以上も削減することに成功した。
さらに実用的なのが汎化性能の高さだ。学習自体は4人プレイのデータだけで行われているが、共有グループトークンを採用しているため、追加の学習を一切行わずに6人、8人、最大10人の同時プレイ映像へとそのままスケールさせることができる。
ローカル環境で動かす方法
コードは Apache-2.0 ライセンスで公開されており、論文、推論用スクリプト、学習コード、重みデータがすべて揃っている。
基本の推論バンドルは約16GBと比較的コンパクトにまとまっている。動画生成バックボーンには Wan2.2(Wan2.2-TI2V-5B)を採用し、DiffSynth-Studio を基盤に構築されている。
動作環境としては、Linux、NVIDIA GPU、Python 3.12、CUDA 12.8、C++コンパイラが求められる。BF16精度の単一GPU推論では、各プレイヤー視点ごとに 640×352 解像度、165フレーム、50サンプリングステップで生成される。VRAM使用量は4人から10人へと増えるにつれてほぼ線形に増加する設計だ。
なぜ重要か
世界モデルが「1人称視点の動画生成ツール」から「複数人が介在するネットワークゲームエンジン」へと一歩進んだ。マルチエージェントシミュレーションやゲームのプロトタイプを検証したい研究者やインディー開発者は、今すぐリポジトリを確認する価値がある。
現時点の出力解像度は 640×352 にとどまり、ディフュージョンベースゆえにリアルタイム実行にはまだ距離がある。しかし、4人の学習重みのままゼロショットで10人同期を破綻なく成立させ、計算コストを86%削ぎ落としたアーキテクチャの完成度は極めて高い。
情報源 (1)
- github.com(新しいタブで開きます)原文github.com