マイクロソフトとXboxが「Muse」公開:ゲーム画面をAI生成、レトロゲーム復刻も視野
マイクロソフト研究部門とNinja Theoryは世界・人間行動モデル「Muse」を発表し、『Nature』誌に論文を掲載しました。対戦アクション『Bleeding Edge』で学習し、3D物理挙動やコントローラー操作を理解してゲームプレイをAI描画します。古いハードに縛られた名作ゲームを現代のデバイスに蘇らせる活用法も模索されています。

AI がゲームの映像を描くだけでなく、コントローラーの入力や物理演算まで理解するようになったら、開発現場はどう変わるでしょうか。
マイクロソフト研究所と Xbox 傘下の Ninja Theory は 2 月 19 日、学術誌『Nature』で新研究を発表し、世界・人間アクションモデル(WHAM)と名付けた生成 AI「Muse」を公開しました。
単に動画を生成する AI とは異なり、Muse は 3D 空間の構造、物理挙動、プレイヤーのコントローラー操作に対するゲームの反応を学習しています。AI が描くゲーム映像と、手元の操作データを同時に生成できるのが最大の特徴です。
対戦ゲームの操作履歴から世界を学習
研究の出発点は 2022 年末、ChatGPT の登場に刺激を受けたチームが、Transformer をゲーム操作と映像の学習に応用できないかと考えたことでした。
英ケンブリッジに拠点を置くマイクロソフト研究所と Ninja Theory がタッグを組み、2020 年発売の 4 対 4 対戦ゲーム『Bleeding Edge』のプレイデータを活用しました。ユーザー許諾を得た膨大な実戦ログを使い、V100 クラスタから H100 クラスタへと学習規模を拡大していったといいます。
研究チームはインディーから AAA スタジオまで計 27 人のクリエイターにヒアリングを実施。モデルの重み、サンプルデータ、操作を試せるデモアプリ「WHAM Demonstrator」は Azure AI Foundry で一般公開されました。
新しい遊びの試作とレトロゲームの救済
マイクロソフトは Muse を 2 つの領域で活用しようとしています。1 つはゲームプレイのアイデア出しです。従来ならプログラマーが数週間かけて作っていたプロトタイプを、AI が映像と操作の両面から即座に提示します。
もう 1 つは過去の名作の復活です。古いハードウェアに縛られて遊べなくなっている名作タイトルを Muse に学習させ、あらゆる画面やデバイス向けに最適化して蘇らせる構想を進めています。
すでに他のファーストパーティ製タイトルでもリアルタイム遊べる AI モデルの学習が進んでおり、近日中に Copilot Labs で短い体験版が公開される予定です。
なぜ重要か
これまでのゲーム向け生成 AI は、コンセプトアートの作成や NPC の台詞生成など、周辺の素材作りに留まるものが大半でした。Muse はゲームの根幹である物理やコントローラー操作そのものに踏み込んでいます。
特にインディー開発者にとっては、ゲームの「手触り」や仕組みの検証コストを劇的に下げるツールになり得ます。コードを一行も書かずに、操作感を含めたプロトタイプを検討できる価値は大きいです。
映像だけでなく手元のコントローラー入力をセットで扱った点は、マイクロソフトの非常に賢明なアプローチだと考えます。動画を垂れ流すだけの世界モデルと違い、操作に対して破綻しにくいゲームの骨格を作れるからです。
ただし課題もあります。ゲームで最も重要なのはフレーム単位のレスポンスと厳密なルールです。確率で動く AI が独特の操作遅延や幻覚を起こせば、プレイヤーはストレスを感じます。レトロゲームの再現という試みも、オリジナルが持つ繊細な手触りをどこまで損なわずに再現できるか、慎重に見極める必要があります。
情報源 (2)
- news.xbox.com(新しいタブで開きます)原文news.xbox.com
- microsoft.com(新しいタブで開きます)報道microsoft.com
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