マイクロソフト、ニューヨーク・タイムズのAI訴訟却下を求め「VCR判例」を引用
The New York Timesによる著作権侵害訴訟に対し、Microsoftは一部請求の却下を申し立てました。同社は大規模型言語モデルについて、かつてのビデオデッキ(VCR)やコピー機と同様に実質的な合法用途がある技術だと主張。潜在的な著作権侵害の可能性を理由に法的責任を問うことはできないと反論しています。

40年前、ハリウッドはビデオデッキ(VCR)を法廷で葬り去ろうとして敗北しました。そして今、マイクロソフトはその古い記憶を法廷に持ち出し、自社のAI帝国を守ろうとしています。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)がOpenAIとマイクロソフトを相手取って起こした著作権侵害訴訟で、マイクロソフトは訴えに含まれる3つの請求の棄却を求める申立書を連邦裁判所に提出しました。同社は、著作権法がVCRや自動ピアノ、コピー機、パソコン、検索エンジンの障害にならなかったのと同様に、大規模言語モデルにとっても障害にはならないと主張しています。
40年前の判例を盾にするマイクロソフト
NYT側は、マイクロソフトがOpenAIと結託して何百万本もの記事を無断複製し、Copilotなどを通じて記事の文体を模倣できるようにしたと主張していました。
これに対しマイクロソフトは、著作権侵害の幇助責任という点に鋭く反論しました。同社によれば、NYTはCopilotのユーザーが実際に直接的な著作権侵害を行った具体的な事例を一件も提示できていません。40年前に家庭用VCRをめぐって争われた際と同様に、実質的な適法利用が可能な製品の提供のみをもって責任を問うことは法律上認められないという立場です。
さらに、学習データから著作権管理情報を故意に削除したとするデジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反の訴えについても、マイクロソフトは証拠がないと反論しました。作家のサラ・シルヴァーマン氏らが起こした別の生成AI訴訟でも、同様のDMCA申し立てはすでに裁判所から棄却されていると指摘しています。
NYT弁護団の反撃とOpenAIの主張
マイクロソフトの論理に対して、NYTの主任弁護士を務めるSusman Godfreyのイアン・クロスビー氏は真っ向から反発しています。
クロスビー氏はメディアに対し、マイクロソフトは記事を複製した事実自体を否定していないと指摘しました。その上で、VCRの製造元は製品を作るために大規模な著作権侵害が必要だとは主張しなかったとして、今回のAIとVCRの比較はまったく的外れだと批判しています。
なお、共同被告であるOpenAIもすでに棄却申立てを行っており、NYT側がChatGPTを巧妙に誘導し、普通ではあり得ないプロンプトを用いて意図的に記事を再現させたのだと主張していました。
なぜ重要か
この裁判の行方は、生成AI業界全体のビジネスモデルを左右する重大な分岐点となります。
マイクロソフトがVCRの判例を持ち出したのは戦術としては極めて巧妙です。AIをコピー機のような中立の道具として位置づけることができれば、生成された結果物に対する法的責任をすべて利用者に転嫁できるからです。
しかし、この論理には大きな穴があると私たちは見ています。VCRは中身が空っぽの機械として出荷されますが、AIモデルは著作物を事前に取り込まなければ機能そのものが成立しません。モデルを作るための無断学習と、完成した道具の利用を同一視する理屈が裁判所に通用するかは疑問です。
もしNYTの主張が認められれば、テック企業は学習データのすべてに対価を支払う必要が生じ、AIの利用料金は高騰する可能性があります。逆にマイクロソフトの理屈が通れば、ネット上のデータを自由に吸い上げてAIを構築する既存のやり方は法的なお墨付きを得ることになります。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com