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研究

マイクロソフト、材料設計向け生成AI「MatterGen」をオープンソース公開

公開 拡散指数 36

米Microsoftは所望の特性プロンプトから未知の結晶材料を直接生成する拡散モデル「MatterGen」をNature誌で発表し、MITライセンスで公開した。中国科学院との共同実験で新材料「TaCr2O6」の合成にも成功しており、電池や半導体分野の新素材開発を加速させる可能性がある。

マイクロソフト、材料設計向け生成AI「MatterGen」をオープンソース公開
画像:microsoft.com

MatterGenは、化学組成や結晶対称性、機械的強度、電磁気特性といったプロンプト(設計要件)を入力するだけで、未知の無機結晶構造をゼロから直接設計できるマイクロソフトのオープンソース拡散モデルです。

従来の材料探索は、研究室での試行錯誤か、既存データベースを総当たりで計算スクリーニングする手法が主流でした。しかしスクリーニングは既知の化合物が尽きれば頭打ちになります。MatterGenはスクリーニングではなく、未知の探索空間から目的の物質を直接生成します。

どのような仕組みか

画像生成の拡散モデルがノイズからピクセルを整えて絵を描くのと同様に、MatterGenは材料の3次元幾何構造上で動作します。

ランダムな初期配置から出発し、原子の位置、元素の種類、周期境界を持つ格子定数を同時に調整していきます。結晶特有の周期性や3次元対称性を正確に扱えるよう、専用のアーキテクチャが設計されています。

ベースモデルは、Materials ProjectおよびAlexandriaデータベースから収集された60万8000件の安定材料データで学習されています。さらに特定物性のラベル付きデータでファインチューニングすることで、任意の特性条件を満たす候補を出力できます。

例えば体積弾性率が400GPaを超える超硬質材料の探索では、既存データベースの探索がすぐに頭打ちになるのに対し、MatterGenは新規の有望構造を安定して生成し続けました。

また、合成結晶で原子同士がサイトを入れ替える「組成的無秩序」に対応するため、同一構造の変種を適切に見分ける新しい構造一致判定アルゴリズムも開発し、評価パッケージとして同梱しています。

研究所での実合成にも成功

計算機上のシミュレーションにとどまらず、実際に現実の物質として合成できるかも検証されました。

マイクロソフトは中国科学院深セン先進技術研究院(SIAT)の李文傑教授チームと共同で、目標体積弾性率200GPaの条件で生成された新規酸化物「TaCr2O6」の合成実験を行いました。

実験室で実際に合成された物質は、タンタルとクロムの間の組成的無秩序を含め、モデルの予測と一致する結晶構造を示しました。さらに実測された体積弾性率は169GPaで、目標値の200GPaに対する相対誤差は20%未満と、実験材料学的に極めて高精度な一致を記録しました。

ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所の計算材料科学者クリストファー・スタイルズ氏は、次世代ミッションを支える新素材探索のツールとして、MatterGenのインパクトを注視しているとコメントしています。

なぜ重要か

電池開発、太陽光発電、超伝導、半導体に関わる研究者やエンジニアは、今すぐ手元で試す価値があります。マイクロソフトは単なる論文発表にとどめず、MatterGenのソースコード、学習・ファインチューニングデータ、評価コードを一式MITライセンスで完全公開しました。

同社の物性エミュレータであるMatterSimと組み合わせれば、「MatterGenで生成し、MatterSimで物性を即座にシミュレーションする」という自律的な研究開発ループが回せます。

ただし過度な期待は禁物です。AIがどれほど熱力学的に安定な原子座標を出力できたとしても、それを現実の炉でどういう温度・圧力・前駆体を使って焼き上げるかという合成プロセスの探索は、依然として現場の職人技と実験的試行錯誤に依存しています。

情報源 (1)

  1. [1]
    microsoft.com(新しいタブで開きます)原文microsoft.com

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