マイクロソフト、独自画像・音声モデルを公開 Bing画像生成を全面自社製に
Microsoftは自社開発モデル「MAI-Image-2.5-Pro」と「MAI-Voice-2-Flash」のパブリックプレビューを開始した。Bing Image Creatorは完全に自社製画像モデルへ移行し、新音声モデルは処理速度を2倍にしつつコストを32%削減した。

OpenAI の最大のパートナーである米 Microsoft が、自社サービスの心臓部で外部モデルから内製モデルへの置き換えを着実に進めています。
Microsoft AI は 7 月 23 日、画像生成モデル「MAI-Image-2.5-Pro」と音声合成モデル「MAI-Voice-2-Flash」のパブリックプレビューを公開しました。
同時に、Bing Image Creator の基盤が 100% 自社製モデルへ完全移行したことや、次世代の Nvidia GB200 計算クラスタが稼働を開始したことも明らかにされました。
画質向上と大幅なコスト削減を両立
MAI-Image-2.5-Pro は、同社史上最高水準の描写品質を持つ画像生成モデルです。画像内での正確なテキスト描画や、自然言語による直感的な部分編集に対応しています。
API 価格は入力テキスト 100 万トークンあたり 5 ドル、画像入力が 8 ドル、画像出力が 106 ドルです。業界観測筋によると、PowerPoint や Bing での運用において、従来の外部モデルと比較して GPU コストを最大 84% 削減できるとされています。
一方の MAI-Voice-2-Flash は、応答速度を極限まで重視した設計です。従来の MAI-Voice-2 に比べて処理速度は 2 倍、価格は 32% 安い 100 万文字あたり 15 ドルに設定されました。
この音声モデルは Dynamics 365 Contact Center に導入され、T-Mobile や EasyJet などの顧客対応を支えており、現場の GPU コストを最大 89% 抑える効果を上げています。
医療現場への導入とクリーンデータへのこだわり
今回のモデル群は、サードパーティ製モデルからの蒸留を行わず、出所が明確なエンタープライズグレードのデータのみを用いて学習された点が特徴です。
専門領域での置き換えも進んでいます。前四半期に 2800 万件の診察を処理した医療支援ツール「Dragon Copilot」では、多言語音声認識モデルが自社製の「MAI-Transcribe-1.5」に切り替えられました。
58 言語に対応し、文字起こしおよび言語識別の誤り率を相対的に 50% 低減させたことで、カルテ作成の精度向上に寄与していると報告されています。
開発者は現在、Microsoft Foundry や MAI Playground を通じて両モデルを試用できます。
なぜ重要か
Microsoft が進めるモデル内製化は、単なる研究開発の域を超え、実製品のコスト構造を根底から変える段階に入ったと見られます。
利用者や企業にとって最大の恩恵は、圧倒的なコストパフォーマンスとコンプライアンスの担保です。他社モデルへの依存を断ち、蒸留を行わないクリーンな学習データを保証することは、医療や金融など規制の厳しいエンタープライズ顧客にとって強い安心材料になります。
業界全体から見れば、OpenAI にとって極めて深刻な脅威となり得ます。最大の出資者であり販路であった Microsoft が、自社の検索や業務アプリを内製モデルで埋め尽くしていけば、フロンティアモデルの API 販売というビジネスモデルは大きな見直しを迫られます。
ただし、課題がないわけではありません。画像内の文字描画や音声応答といった個別タスクの最適化では成果が出ているものの、複雑で柔軟な汎用推論において、内製モデルがどこまで最上位の汎用フロンティアモデルに迫れるかは今後も注視する必要があります。
情報源 (1)
- microsoft.ai(新しいタブで開きます)原文microsoft.ai