マイクロソフトとEpicが提携拡大:電子カルテに生成AIを全面統合
マイクロソフトと米電子カルテ大手のEpicは医療向け生成AIの導入拡大に向けた協業強化を発表した。Azure OpenAI ServiceやNuance DAX Expressをカルテ基盤に組み込み、診療記録の自動要約や診察会話からの書類作成支援を実現。深刻化する医療従事者の疲弊軽減を目指す。

診察室で医師が患者の顔を見ず、パソコンのキーボードばかり叩いている光景は珍しくありません。米国の保健福祉省によると、2025年までに国内で9万人の医師不足が見込まれており、現役医師の4割から6割が燃え尽き症候群を訴えています。さらにマッキンゼーの調査では、米国の医療費の約4分の1が事務管理コストに消えているのが現状です。
マイクロソフトと電子カルテ大手のEpicは戦略的提携の拡大を発表しました。同日開催されたEpicの年次ユーザーグループミーティングにおいて、Azure OpenAI ServiceとNuanceの技術を活用した数多くのCopilotソリューションが公開されました。
診察室の会話を自動でカルテ化
今回の連携で最も大きな動きが、Nuanceの環境臨床記録ツール「DAX Express」のネイティブ統合です。
医師と患者の自然な会話を聞き取ってカルテ下書きを作成するこの技術が、Epicのデスクトップ環境「Hyperdrive」とモバイルアプリ「Haiku」に直接組み込まれました。あわせてNuanceは、Epicの新たなベンダープログラム「Partner and Pals」の第1弾パートナーに指定されています。
また、Epicの受信トレイ機能にもAI要約が追加され、医師や看護師向けに文脈に応じた要約や入力候補を提示して文書作成を効率化します。
事務処理面では、生成AIを用いた医事請求コーディング支援が導入されました。カルテの記述に基づいてコーディング候補を提示し、請求業務の精度向上と迅速化を図ります。さらに自己分析ツール「SlicerDicer」にもAzure OpenAIが組み込まれ、自然言語によるデータ探索で希少疾患の調査や臨床エビデンスの補完が可能になりました。
なぜ重要か
日常的にカルテ記入に追われている現場の医療従事者にとって、今回の機能群は最も実用的なAIの使い道になる可能性があります。問診中に画面を見続ける時間が減り、残業して書類を作成する負担が軽くなれば、燃え尽き防止に直接つながるはずです。
マイクロソフトのアプローチは非常に現実的だと評価できます。独自の医療アプリを新設して医療機関に売り込むのではなく、業界標準としてすでに普及しているEpicの基幹システムの中にAzure OpenAIを埋め込みました。これにより、現場の導入ハードルは限りなく低くなります。
一方で、医療記録におけるAIのハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクは無視できません。薬の用量やアレルギー情報の誤記載は重大な事故につながるため、医師による最終確認の手間がどこまで残るかが、真の効率化を左右する課題になりそうです。
UPMCとKLASリサーチの幹部調査でも、医療機関は今後2年間のAI投資として業務運用の最適化を最優先に挙げています。マイクロソフトとEpicのタッグは、まさにその最大の需要を押さえた形です。
情報源 (1)
- blogs.microsoft.com(新しいタブで開きます)原文blogs.microsoft.com