Meta、買収撤回命令を受けAIスタートアップManusとの関係を全面停止
Metaは、規制当局から20億ドル規模の買収取引の撤回を命じられたことを受け、AIスタートアップManusとの業務関係を完全に打ち切った。MetaはManusとのデータ共有を停止し、社内従業員による同社AIツールの利用も禁止した。

20億ドルで買収した注目のAIスタートアップが、わずか半年で社内システムから物理的に切り離される事態となりました。
Metaは、AIエージェントを手がけるManusとの業務上の連携を完全に遮断し、データ共有を停止しました。Bloombergの報道によると、Metaの従業員はすでに社内プロジェクトでManusのAIツールを利用できない状態になっています。
約2カ月前の4月、中国当局が国家安全保障や技術輸出管理違反を理由に買収の取り消しを命じており、今回の措置はそれに従う最も具体的な動きとなります。
20億ドル案件の巻き戻しと10億ドルの買い戻し策
Manusは中国発の「Butterfly Effect」が開発し、2025年半ばに従業員と拠点をシンガポールへ移転しました。その後、昨年12月にMetaが20億ドルでの買収を発表して大きな話題を呼びました。
しかし、この取引は米中双方から厳しい視線にさらされていました。米国側ではJohn Cornyn上院議員が中国系企業への米国資本流出を問題視し、中国側も規制違反として白紙撤回を要求しました。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米Benchmarkなど初期投資家はすでに売却益を受け取っている一方、Tencent、HSG、ZhenFundといったアジア系VCは撤回手続きに協力する方針を示しています。
創業チーム側も手をこまねいているわけではありません。5月の報道によれば、創業者らは外部投資家から約10億ドルを調達してMetaから自社を買い戻し、中国合弁企業への再編を経て香港市場への上場を目指して協議を進めています。香港では今年、MiniMaxやZhipuといったAI企業のIPOが相次いでいます。
なお、Metaとの関係が断たれる中でもManusの開発は続いており、足元ではSimilarwebやShopifyとの連携機能を新たに公開しています。
締め付けを強める規制の網
Manusの事例は、中国による技術流出防止の厳格化を象徴しています。
中国当局は民間企業の研究者や幹部に対しても渡航制限を拡大し、出国前の政府承認を義務付けました。
さらに資金調達面でも、Moonshot AI、StepFun、ByteDanceなどの有力AI企業が米系資本を受け入れる際には事前承認が必要になったと報じられています。
なぜ重要か
一般ユーザーや事業者にとって、Manus自体はShopify連携などを出し続けており、今すぐサービスが消えるわけではありません。しかし、Metaの強大なインフラやモデルとの統合が断たれた以上、今後の機能進化スピードには疑問符がつきます。
業界全体にとって、今回の騒動は「シンガポール経由でのシリコンバレー売却」という定番のイグジット戦略が完全に崩壊したことを示しています。拠点を海外に移しても、技術や創業者の出自が中国にあれば、米中両国の規制当局から追及を免れることはできません。
Metaの視点で見れば、大金を投じてAgent領域を一気に強化しようとした試みは、手痛い失敗に終わったと言えます。地政学リスクが絡む買収は、独占禁止法以上に予測が難しく、巨額のサンクコストを生む危険性を浮き彫りにしました。
情報源 (2)
- theinformation.com(新しいタブで開きます)原文theinformation.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com