Meta、人型ロボットAIのARIを買収 家事などをこなす基盤モデルを強化へ
Metaは人型ロボット向けAIを開発するスタートアップARIの買収を発表した。買収額は非公表。ARIのチームはSuperintelligence Labsに合流し、家事などの身体作業を担う基盤モデル開発を推進する。実世界での物理的インタラクションがAGIへの鍵と見なされる中、ロボット制御技術の獲得を急ぐ。

テキストや画像を生成するだけのAIでは、真の知能に到達できないのではないか。シリコンバレーではいま、AIが物理世界と直接関わりながら学ぶ身体性、いわゆる具身知能へのシフトが急速に進んでいます。
Metaは5月1日、人型ロボット向けAIを開発するスタートアップのAssured Robot Intelligence(ARI)を買収したことを明らかにしました。買収額は非公開です。ARIのチームおよび共同創業者らは、MetaのAI研究組織であるSuperintelligence Labsに合流します。
アマゾンに続く電撃移籍、スター研究者を囲い込むMeta
ARIは、AI特化のシードVCであるAIX Venturesから資金を調達していた新鋭スタートアップです。
同社が目指していたのは、人型ロボットが家庭の家事などの肉体労働をこなせるようにするための基盤モデル開発です。複雑で刻々と変化する人間の生活空間において、人間の行動を理解し、予測し、適応できる知能の構築に取り組んでいました。
注目すべきは創業陣の実績です。共同創業者のXiaolong Wang氏は元Nvidiaの研究員で、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)の准教授を務め、数々の賞を受賞してきた人物です。
もう一人の共同創業者であるLerrel Pinto氏は元ニューヨーク大学(NYU)教員で、先月Amazonに買収されたばかりの小型人型ロボット企業Fauna Roboticsの共同創業者でもありました。アマゾンによる買収劇の直後に、同氏の別チームがMetaに合流した形です。
Metaの広報担当者はTechCrunchに対し、両氏が率いるチームがロボット制御や自己学習、全身人型制御のモデル設計において深い専門知識をもたらすと述べています。
AGIへの道は物理世界に通ず
Metaによるロボットへの関心は突発的なものではありません。同社の研究部門は何年も前からロボット技術を手がけており、約1年前に流出した内部メモでも、AIモデルとハードウェアの両面から一般消費者向けロボットを開発する構想が明かされていました。
業界の予測値の開きもその過熱ぶりを物語っています。ゴールドマン・サックスは2035年までに人型ロボット市場が380億ドル規模になると試算する一方、モルガン・スタンレーは2050年までに5兆ドル規模に達すると予測しています。
Metaが最終的に自社製ロボットを発売するかどうかに関わらず、画面の中のデータ学習だけではAGI(汎用人工知能)に届かないという見方が専門家の間で強まっています。現実世界での直接的な試行錯誤こそが不可欠だという認識です。
なぜ重要か
一般ユーザーの視点では、すぐに自宅で使える家事代行ロボットが登場するわけではありません。製品化まではまだ長い道のりがあり、今すぐ何かを試せる段階ではないと言えます。
業界にとっては、テック巨人同士の戦場がデジタル空間から物理空間へと完全に拡張されたことを示しています。先月Faunaを手に入れたアマゾンに対抗するようにMetaがARIを傘下に収めた動きは、ロボットの運動制御と学習を担うトップタレントの奪い合いがいかに激化しているかを物語っています。
Metaの戦略は極めて合理的だと私たちは考えます。ハードウェアを一から量産するリスクを冒す前に、まずは人型ロボットを自律学習させる頭脳部分の最先端人材を確実に押さえたからです。
ただし懸念もあります。ロボット工学はソフトウェア開発と異なり、物理的な故障や安全性の壁が極めて高く、莫大なコストと時間を消費します。Metaがこの高度な頭脳集団を単なる基礎研究にとどめず、実際のプロダクトやオープンモデルとして形にできるかが今後の試金石となります。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com