Latent Labs、ブラウザで新規タンパク質を設計できるAI「LatentX」を公開
元DeepMindの研究者が率いるLatent Labsは、ブラウザ上で新規タンパク質を設計できる基盤モデル「LatentX」を公開した。既存構造を予測するAlphaFoldと異なり、自然界にない分子を直接生成できるのが特徴。現在無料で利用可能となっている。

自然界に存在しない新しいタンパク質を設計するには、これまで高度な計算生物学チームと膨大なコンピュートリソースが必要でした。しかし今、その作業がウェブブラウザ上で行えるようになろうとしています。
DeepMindでAlphaFoldのタンパク質設計チームを率いたSimon Kohl氏が立ち上げたLatent Labsは、5000万ドルの資金調達を経て、ブラウザ上で動作するAIモデル「LatentX」を公開しました。
既存の構造予測から、ゼロからの生成へ
タンパク質AIといえばAlphaFoldが有名ですが、Kohl氏は両者の違いを明確に説明しています。AlphaFoldは自然界にすでに存在するタンパク質の構造を予測して可視化するツールであり、新しい分子を作り出すためのモデルではありません。
一方のLatentXは、自然界の枠組みを超えた全く新しい分子を原子レベルの精度で直接生成します。Kohl氏によると、タンパク質結合に関する実験結果でSOTA(最高水準)を記録し、物理的なウェットラボで試験した際にも高い生存率と活性を示しているといいます。
大学の研究機関やバイオテック企業、製薬会社は、ローカルに巨大な計算基盤を構築することなく、ブラウザを開くだけで高度な設計を始められます。
自社創薬ではなく、ツールのライセンス提供に特化
創薬AIの分野では、自社パイプラインで新薬を開発するXairaやRecursion、DeepMindからスピンアウトしたIsomorphic Labsなどが注目を集めています。
それに対し、Latent Labsは自社で薬を作るのではなく、外部企業にモデルをライセンス提供する「つるはしビジネス」を選びました。Kohl氏は、すべての企業が自前のAIチームや計算資源を持てるわけではないと指摘しています。
LatentXは現在無料で提供されており、今後高度な機能が追加された段階で課金が導入される予定です。同社にはRadical VenturesやSofinnova Partnersのほか、GoogleのJeff Dean氏、AnthropicのDario Amodei氏、ElevenLabsのMati Staniszewski氏といった著名AIリーダーらが出資しています。
なぜ重要か
ブラウザ上で誰でも高度なタンパク質生成ができるようにした試みは、バイオ研究の間口を大きく広げる可能性があります。特に資金力に乏しい小規模なバイオベンチャーや学術チームにとって、インフラ構築の手間なく最先端モデルを試せる価値は非常に高いと言えます。
また、自社で巨額の開発費と治験リスクを抱える創薬パイプラインを持たず、ツールのライセンスに専念する戦略は、事業の安定性という観点で極めて賢明な判断です。
一方で、競合にはオープンソースモデルを提供するChai DiscoveryやEvolutionaryScaleが存在します。計算上のベンチマークだけでなく、実際のウェットラボ実験でどれだけ有望な分子を生み出し続けられるかが、将来の課金プラン定着の鍵になりそうです。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com