Kickstarter、AI成人画像プロジェクトのCFを中止:5.6万ドルを返金へ
Kickstarter は成人向け AI 画像生成を目指す Unstable Diffusion のクラウドファンディングを規約見直しに伴い中止した。867 人の支援者から集まった 5.6 万ドル以上は全額返金される。アーティストからの激しい抗議を受け、AI プロジェクトの著作権や安全性の基準が問われている。
生成 AI のフィルターを外せば、あっという間に巨額の資金が集まる。しかし、クラウドファンディング大手の Kickstarter はその資金の受け取りを拒否した。
Kickstarter は 12 月 21 日、成人向け(NSFW)画像生成 AI の開発を進めていたグループ「Unstable Diffusion」のプロジェクトを規約変更を理由に停止した。同プロジェクトは当初 2 万 5000 ドルの目標を掲げていたが、867 人の支援者から 5 万 6000 ドル以上を集め、目標額の 2 倍以上を達成していた。
Kickstarter は目標未達時だけでなく規約違反による中止時も全額返金となる仕組みを採用しているため、集まった資金はすべて支援者に返還され、同グループの手元には 1 ドルも入らない。
クリエイターの反発と同意なきデータ学習への懸念
Kickstarter の CEO である Everette Taylor 氏は公式ブログで、プラットフォームは常に人間のクリエイターと創造的な活動の側に立つと表明した。AI プロジェクト全般に対する明確な基準はまだ策定中としながらも、許諾のない著作物が学習データに含まれている点や、特定のコミュニティに危害を及ぼすリスクを審査の対象にすると説明している。
今回の停止の直接の引き金となったのは、アーティストらによる Twitter 上での強い抗議だ。イラストレーターの Karla Ortiz 氏や Sarah Andersen 氏らが Kickstarter を公に批判し、盗用を助長し、同意のない性的コンテンツを生み出す危険なツールを支援していると抗議の声を上げた。
特にアーティストを警戒させたのは、Unstable Diffusion が掲げていた学習データの計画だ。同グループは 2 万 5000 ドルの資金を使って 7500 万枚の新規画像を学習させると説明しており、そのうち 2500 万枚を ArtStation や DeviantArt、Behance などのポートフォリオサイトから収集するとしていた。
排除されても独自決済で資金調達を継続
Kickstarter から閉め出されたものの、Unstable Diffusion 側は開発を諦めていない。同グループの CEO である Arman Chaudhry 氏は、9 万 7000 人以上のメンバーを抱える Discord で声明を発表し、クリエイター側の抗議活動に屈した Kickstarter を批判した。
彼らはすぐに独自サイトを更新し、Stripe を利用した直接寄付の受け付けを開始した。すでに 1 万 5000 ドル以上の資金を調達したという。Chaudhry 氏は、AI アートを違法化しようとする反対派が GoFundMe で 15 万ドルを集めてロビー活動を行っていると主張し、対決姿勢を鮮明にしている。
もともと Stable Diffusion の学習データに含まれる成人向けコンテンツは全体の 3 パーセント未満とされており、そのままでは精度の高い成人向け画像を生成しにくい。Unstable Diffusion は有志を通じてデータを集めてファインチューニングを行う計画だったが、ネット上の成人コンテンツには本人の同意確認が取れていないものも多く、同意のないディープフェイクポルノに悪用される懸念が根強く指摘されている。
なぜ重要か
Kickstarter による今回の措置は、生成 AI が直面する著作権と倫理の対立において、主流プラットフォームがクリエイター保護へと明確に舵を切り始めた転換点と言える。
クリエイターにとっては、集団で声を上げることが資金調達のパイプラインを止める具体的な抑止力になることが証明された。一方で、検閲のない AI モデルを求める開発者やユーザーにとっては、大手決済網やクラウドファンディングから締め出され、個人サイトや独自の寄付プラットフォームへと追いやられる流れが決定的になりつつある。
Kickstarter の対応は、同社のブランドイメージを守る意味では賢明だったが、根本的な基準の提示を避けており、場当たり的である感は否めない。AI そのものを禁止するわけでもなく、グレーゾーンを曖昧にしたまま世論の反発が大きいプロジェクトだけを切り捨てた格好だ。
私たちが考えるに、プラットフォームからの排除だけでこの種の問題を解決することは難しい。Unstable Diffusion が独自決済で即座に資金を集め直したように、需要が存在する限り開発は地下に潜るだけだ。かえって監視の目が行き届かない場所で無許諾・非合意のモデル開発が加速する恐れがあり、法整備を含めた根本的なルール作りが急務となっている。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com
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