IBMがGranite 3.2をオープンソース公開、「思考スイッチ」付き推論と文書特化VLM
IBMはGranite 3.2を発表し、Apache 2.0ライセンスでHugging Face等に公開した。APIで思考プロセスをオン・オフできるGranite 3.2 Instructに加え、企業向け文書理解に特化した初の公式視覚言語モデルGranite Vision 3.2 2Bを提供する。

IBMがオープンソースで公開したGranite 3.2は、実務重視の軽量AIモデル群です。最大の目玉は、API経由で思考プロセスをオン・オフできる推論特化テキストモデルと、ビジネス文書の解析に特化した2Bサイズの視覚言語モデル(VLM)です。全モデルが商用利用しやすいApache 2.0ライセンスで提供され、Hugging Faceのほか、Ollama、LM Studio、IBM watsonx.aiなどで即座に利用できます。
何ができるか:思考プロセスにスイッチを設置
テキストモデルの中核を担うのは、Granite 3.2 Instructの2Bおよび8Bモデルです。複雑な論理課題をステップごとに分解して解く思考の連鎖(CoT)推論に対応しています。
現在の推論特化モデルには、処理が遅くトークン消費が多いという難点があります。IBMの研究チームによると、著名な推論モデルDeepSeek-R1は「ローマはどこにある?」という単純な質問に対しても50.9秒かけて考え続けたといいます。日常的なタスクでこの過剰な思考は無駄なコストになります。
そこでGranite 3.2では、APIエンドポイントにthinking:trueまたはthinking:falseを渡すだけで、思考プロセスを即座に切り替えられる仕組みを導入しました。深い論理的思考が必要なときはオンにし、手短な返答で十分なときはオフにしてリソースを節約できます。
技術面では、思考選好最適化(TPO)フレームワークを採用しました。これにより、推論力を高めつつ一般的な指示追従性能や安全性を落とさない設計になっています。推論時の計算拡張技術と組み合わせることで、8BモデルでありながらGPT-4oやClaude 3.5 Sonnetに匹敵する数学推論性能を発揮するとされています。なお、DeepSeekが生成した蒸留データは一切使われておらず、企業の法的リスクにも配慮されています。
文書理解に特化した2B視覚モデル
画像入力に対応するGranite Vision 3.2 2Bは、一般的な画像認識ではなく、請求書、PDF、グラフ、業務フロー図などの解析に照準を絞った軽量モデルです。
従来の文書OCR連携における誤認識の蓄積や、巨大VLMの高コストを避けるため、IBMは自社のオープンソースツールDoclingを活用しました。8500万件のPDFを処理し、2600万組の合成Q&Aデータを生成して学習に投入しています。その結果、DocVQAやChartQAといった主要な企業文書ベンチマークで、はるかに大きな競合モデルに匹敵する精度を達成しました。
あわせて、モデルサイズを30%削減した安全監査モデルGranite Guardian 3.2や、パラメータ数1000万未満で最大2年先を予測する時系列モデルTinyTimeMixersも公開されています。
なぜ重要か
ローカル環境や社内サーバーでAIを動かしたい開発者にとって、Granite 3.2は極めて扱いやすい選択肢です。2Bや8Bという小規模構成のおかげで、一般向けのGPUや手元のマシンでも十分に軽快動作します。
思考プロセスを開発者側で制御できる設計は、推論コストを最適化したい企業現場にとって非常に現実的です。超難問のコーディングを解かせるには最先端の巨大モデルが必要ですが、社内ドキュメントの読み取りや日常業務の自動化であれば、この軽量で自由度の高いモデルが最も無駄のない解になり得ます。
情報源 (2)
- ibm.com(新しいタブで開きます)原文ibm.com
- zdnet.com(新しいタブで開きます)報道zdnet.com