人間が歌詞を引用すると訴訟、AIの学習は「フェアユース」?英紙コラムが新法整備を訴える
英ガーディアン紙のコラムニストが、生身の作家が歌詞を数行引用するだけで高額な許諾料を求められる一方、AI企業が大量の楽曲を学習させて生成するのは合法とされる二重基準を批判した。巨大テック企業による搾取を防ぎ、人間の創作を守るための法改正を訴えている。

人間の作家が自著の中でわずか12語の歌詞を引用しようとすれば、法外なライセンス料や訴訟リスクを理由に出版社から止められます。しかし、時価総額数兆円規模の巨大テック企業が世界中の歌詞をスクレイピングしてAIに学習させ、類似のフレーズを吐き出させる行為は、米国の法廷で「フェアユース」と見なされつつあります。
英ガーディアン紙のコラムニスト、アレクサンダー・ハースト氏は執筆中の回顧録で、自身が投資で120万ドル以上を稼ぎ、その後すべてを失って架空利益に対する巨額の税金だけが残った壮絶な体験を綴っています。その冒頭にロックバンドThe Nationalの名曲から「借金に借金を重ねている」という趣旨の1行を引用しようとしたところ、版権管理の厳しさを理由に出版社から断念を促されました。エミネムの名曲「Lose Yourself」の引用も同様に不可能です。
人間には許されず、AIには許される逆転現象
ところが、同じ歌詞を大規模言語モデル(LLM)に入力し、「エミネム風のラップでこの歌詞を取り入れて」と指示すれば、AIは何の許諾料も支払うことなく、一字一句違わぬフレーズを組み込んだ楽曲を瞬時に生成します。
先月下されたMetaやAnthropicに対する著作権訴訟の判決でも、AIによる学習や出力は著作権侵害に当たらないとする判断が示されました。法的な解釈では、モデルの学習は個人的なメモのようなものであり直接的な複製販売とは異なると説明されますが、AI製品にとっては出力されるテキストそのものが商品です。
これに対し、エミネムの楽曲を管理するEight Mile Style社はMetaを相手取り提訴しました。ライセンス契約も結ばず、アーティストの創造的努力を経営陣や株主の利益のために不当に搾取していると厳しく非難しています。
なぜ重要か
この問題は、現行の著作権法が生成AI時代の現実に追いついていないという歪みを浮き彫りにしています。
一般のクリエイターや執筆者にとって、現状は極めて不公平です。生身の人間は厳格な著作権ルールに縛られ、わずか数行の引用すら許されない一方で、巨大資本を持つテック企業は全人類の文化的遺産をタダ同然で吸い上げ、商業モデルとしてマネタイズできています。個人がフェアユースを主張して法廷闘争を戦い抜くのは実質的に不可能です。
AI業界にとっても、法廷での初期の勝利がそのまま安泰を意味するわけではありません。エミネムのような影響力を持つ権利者からの反発が強まれば、世論の反発と法改正の機運が一気に高まる可能性があります。
AIが世の中のすべてを劇的に変えていくのであれば、もはや現実に合致しなくなった著作権法そのものが根本から見直されるべき時期に来ていると考えられます。
情報源 (1)
- theguardian.com(新しいタブで開きます)原文theguardian.com