GoogleがAI詐欺組織を提訴、FBIや大手通信各社と連携し撲滅へ
GoogleはAIを悪用したフィッシング詐欺グループ「Outsider Enterprise」を相手取り民事訴訟を起こした。同組織はTelegramを介して偽サイトを9,000件以上構築し悪質メッセージを大量送信していた。同社はFBIや通信キャリアと連携して遮断を進めつつ、AI詐欺規制法案の成立も後押ししている。

「荷物の配達に失敗しました」「アカウントの緊急確認が必要です」といった不審なショートメッセージは、誰のスマートフォンにも届いた経験があるはずです。かつては不自然な日本語や誤字で見分けがつきましたが、生成AIの登場により、本物の通知と見分けがつかないフィッシング詐欺が急増しています。
こうした事態を受け、GoogleはAI悪用型サイバー犯罪組織「Outsider Enterprise」に対する民事訴訟を提起しました。インフラの解体を目指し、司法当局や大手通信キャリアを巻き込んだ大規模な対抗措置に乗り出しています。
2週間で250万件のフィッシングSMSを送信
Googleの発表によると、Outsider Enterpriseは中国を拠点とし、Telegramを通じて連絡を取り合っている組織的なサイバー犯罪ネットワークです。Googleをはじめとする著名ブランドを装う「フィッシングキット」を配布し、末端の詐欺グループに偽メッセージをばらまかせていました。
その手口と規模は極めて大規模です。同グループに関連する偽サイトは9000件、詐欺URLは100万件以上に上ることが判明しています。主な目的は、偽のログイン画面などからパスワードやクレジットカード情報を盗み出すことです。
今年5月のわずか2週間で、このグループはAndroidユーザーに向けてOutsider関連の悪質なリンクを含むSMSを250万件送信しました。この2週間にユーザーから報告された迷惑SMSは5万5000件に達し、1分間に2件以上のペースで通報が寄せられていた計算になります。これまでに数十万人が被害に遭い、被害総額は数百万ドル規模に達すると推定されています。
通信大手、FBI、連邦議会が連携
単に偽サイトを閉鎖するだけでは根本的な解決にならないため、Googleは通信業界や政府機関との連携を強化しています。
通信網の段階で被害を食い止めるべく、Googleは米通信大手のAT&T、T-Mobile、Verizonと協力体制を敷いています。通信キャリア側もAIを活用した不正メッセージの検知や、業界団体を通じた発信元追跡を進めています。
さらに米連邦捜査局(FBI)のサイバー部門が法執行措置を進めているほか、Google自身もAndroidの標準防御機能によって毎月100億件以上の悪質なメッセージをブロックしていると説明しています。また、詐欺対策の国家戦略法案など、連邦議会で審議されている7つの超党派法案への支持も表明しました。
なぜ重要か
私たちは、今回の動きがAI時代のセキュリティ対策における大きな転換点を示していると考えます。
一般ユーザーにとって、AIが生成した自然な文面を人間の注意力だけで見破ることはもはや不可能です。怪しい日本語を探すといった従来の自己防衛策は通用しなくなっており、通信事業者やプラットフォーム側が手前で遮断する仕組みが不可欠になっています。
Googleのアプローチとして評価できるのは、端末上の対策にとどまらず、通信キャリアによる回線レベルの遮断、FBIによる捜査、民事訴訟によるドメイン差し押さえ、さらには法整備の推進まで一体化させている点です。犯罪者側の収益基盤と配信ルートを同時に叩く手法は非常に理にかなっています。
一方で、国境を越えたサイバー犯罪の完全な根絶には依然として高い壁が存在します。海外を拠点とする首謀者を法的に裁くことは容易ではなく、ドメインをいくら差し押さえても、Telegramなどを通じた犯罪キットの流通が続く限り、看板を変えた別のグループが再び現れる可能性は否定できません。
情報源 (1)
- blog.google(新しいタブで開きます)原文blog.google