Google、強化学習で量子計算機を実行中に自動校正 エラー率を20%削減
Googleの研究チームは強化学習と量子誤り訂正を組み合わせ、量子コンピュータの稼働中に制御パラメータを自律補正する手法を発表した。AIがエラー信号をもとに数千のパラメータを微調整し、システムを止めずに論理エラー率を20%低減。長時間にわたる連続計算を阻んでいた最大の壁を破る成果となる。
交響楽団が演奏している最中、数小節ごとにバイオリンのチューニングが狂ってしまう場面を想像してみてください。そのたびに演奏を完全に止め、全員で調律し直してから最初からやり直すとしたら、まともなコンサートにはなりません。これまでの量子コンピュータは、まさにこの状態にありました。
量子ビットは極めて繊細なアナログ信号で制御されているため、わずかな温度変化や電子機器のノイズで周波数や位相が簡単にドリフトしてしまいます。これまでは計算を完全に中断し、数千個に及ぶ制御パラメータを再調整してからリブートするしかありませんでした。しかし、実用的な量子計算を何日も何カ月も走らせようとすれば、この仕様は致命的な壁になります。
演奏を止めずにバイオリンを調律する
Googleの研究チームは英科学誌『Nature』で、強化学習を用いて稼働中の量子コンピュータを自動校正する新手法を発表しました。研究者たちが言うように、まさに音楽を止めずに楽器を調律することに成功したわけです。
ブレークスルーの鍵は、量子誤り訂正と強化学習の組み合わせにあります。量子重ね合わせ状態は直接測定すると壊れてしまうため、誤り訂正では補助的なチェックを行ってエラーの発生を示す警告信号を取り出します。
Googleは、この絶え間なく出力されるエラー信号をAIエージェントへの入力として活用しました。
エラー信号から自律学習するAIエージェント
この強化学習エージェントは、エラーパターンの変化を観察しながら、量子ビットを動かすマイクロ波の周波数、位相、振幅など数千の制御パラメータをリアルタイムで微調整します。
物理モデルに頼るのではなく、実際のデータから試行錯誤を繰り返すことで、AIはどのパラメータを動かせばエラーを最小化できるかを自律的に学習しました。
その結果、論理エラー率はさらに20%低減し、新たな最低記録を達成しました。さらに、システムの規模が拡大してもAIの学習速度が落ちないことが確認されており、将来の大型プロセッサにも適用できる見通しが立っています。
なぜ重要か
量子コンピュータの進化といえばビット数ばかりが注目されがちですが、実用化に向けた最大の難所は「計算を止めずに安定動作させ続けられるか」でした。
今回のGoogleのアプローチは非常に合理的です。数十年にわたる物理モデルベースの制御は、ロボティクスやタンパク質構造予測がそうであったように、複雑な現実のノイズを前に限界を迎えていました。そこへデータ駆動型の強化学習を導入した判断は極めて的確です。
量子化学シミュレーションや新薬開発など、数日規模の連続稼働を前提とするアルゴリズムにとって、計算を止めることなくドリフトを補正できる技術は不可欠な基盤になります。
もっとも、これですべてが解決したわけではありません。AIがカバーできるのはハードウェアのドリフトや制御のズレであり、環境との相互作用によるデコヒーレンスそのものを消し去るわけではありません。それでも、頻繁にリセットボタンを押す必要がなくなった一歩は、実用化のタイムラインを確実に引き寄せています。
情報源 (1)
- research.google(新しいタブで開きます)原文research.google