Google、批判殺到のGemini五輪向け広告を取り下げ
Googleは、批判が相次いでいたGeminiの五輪向け広告「Dear Sydney」の放送取り下げを決定した。父親が娘に代わりAIにファンレターを書かせる描写が、心のこもった自己表現を損なうとして炎上。Google側は下書きの支援を意図したと釈明したものの、反発を受けて撤回に追い込まれた。

憧れのヒーローにファンレターを書くとき、人の心を打つのは洗練された文章ではなく、拙くても本人が一生懸命に綴った生の感情です。しかし、Google はその機微を見誤ったようです。
パリ五輪のテレビ中継などで放映されていた Google の Gemini 広告「Dear Sydney」に対し、視聴者からの激しい批判が集中したことを受け、同社はこの広告の放映を取り下げる決定を下しました。
物議を醸した 60 秒の広告では、ある父親が米国の陸上スター選手である Sydney McLaughlin-Levrone に宛てて、幼い娘のためにファンレターを書こうとする場面が描かれます。感動的な親子のストーリーになるはずでしたが、父親は娘自身に言葉を書かせるのではなく、Gemini にプロンプトを打ち込んで手紙を代筆させました。
父親は AI に対し、Sydney がいかに娘のインスピレーションになっているか、いつか娘が彼女の記録を破るつもりであること、そして最後に冗談を添えるよう指示します。
噴出した反発と釈明
この広告は放映直後からソーシャルメディアで炎上しました。ファンレターとは書き手が不器用ながらも心をさらけ出すことに意味があるのに、それを安易に AI に外注する姿勢が、表現することの意義を奪っていると批判されたのです。
ワシントン・ポスト紙のコラムニスト Alexandra Petri 氏は、この広告が流れるたびにテレビにスレッジハンマーを投げつけたくなる、と痛烈に批判しました。
各メディアに対する声明の中で、Google は批判を受け止めていると認めつつも、Gemini が人間を完全に置き換える意図はないと弁解しました。文章のアイデアを求めている人に対し、Gemini が思考のきっかけや初稿を提供できる様子を示したかっただけだと説明しています。
大手テック企業が AI やテクノロジーの広告で反感を買ったのは、これが初めてではありません。数か月前にも、Apple が新型 iPad の広告で楽器や画材などの創造的な道具を油圧プレスで押しつぶす演出を行い、激しい批判を浴びたばかりでした。
なぜ重要か
テック企業は、AI をめぐる世間の空気感や心理的な境界線をまだ掴み切れていません。
仕事のメールの下書きや事務的な報告書の作成であれば、AI の導入は合理的であり、多くのユーザーにとっても価値があります。しかし、人とのつながりや個人的な感情の吐露までアルゴリズムに任せる描写は、ユーザーに強い違和感と不快感を与えます。誤字があろうと、子供が自分の手で一生懸命に書いた手紙こそが、受け取る側にとってかけがえのない宝物だからです。
今回の Google のアプローチは、極めて軽率だったと言えます。これは「AI が人間の仕事を奪う」という議論にすら至っておらず、人間らしい感情のやり取りまでをも効率化の対象として捉えてしまった、シリコンバレー的な情緒の欠如を露呈させました。
テクノロジーがどれほど進化しても、人間が自ら悩み、言葉を紡ぐプロセスを侵食してはならない領域が存在します。AI 企業がそうした境界線を理解できない限り、一般社会からの警戒心は強まる一方だと考えられます。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
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