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研究

Googleが「AlphaGenome」発表、1MbのDNA配列から単一塩基解像度で制御効果を予測

公開 拡散指数 35

Googleの研究チームがNature誌で統合型DNA配列モデル「AlphaGenome」を発表した。1Mbの塩基配列を入力し、単一塩基解像度かつ11種類のモダリティで遺伝子発現やスプライシングを予測できる。26の変異効果評価のうち25で既存最高を記録し、98%以上を占める非コード領域の変異解析を前進させた。

Googleが「AlphaGenome」発表、1MbのDNA配列から単一塩基解像度で制御効果を予測
画像:nature.com

ヒトのゲノムのうち、タンパク質をコードしている部分はわずか2%未満にすぎません。残りの98%以上を占める「非コード領域」は、かつてジャンクDNAなどと呼ばれていましたが、実際には遺伝子の発現時期や量、スプライシングを調節する重要なスイッチの役割を果たしています。

しかし、この領域の変異がもたらす影響をAIで読み解く試みは、長年トレードオフに悩まされてきました。塩基単位の細かい変化を見ようとすると配列の短い断片しか読み込めず、遠くの制御領域を見ようと長い配列を入力すると、解像度が数十〜数百塩基単位にぼやけてしまうというジレンマです。

1月28日付の英科学誌『Nature』に掲載された研究で、この壁を破る新モデル「AlphaGenome」が発表されました。100万塩基対(1 Mb)という極めて長いDNA配列をそのまま入力し、単一塩基対の解像度で、11種類もの分子機能データを一括予測するモデルです。

100万塩基を「高解像度」のまま読み解く

1 Mbというコンテキストの長さは、生物学的に決定的な意味を持ちます。ヒトゲノムで実験的に確認されているエンハンサーと遺伝子の相互作用のうち、約99%がこの1 Mbの範囲内に収まっているためです。遠く離れた制御領域の影響を捉えるには、これだけの長さが不可欠でした。

従来のモデルであるSpliceAIやBPNetは塩基レベルの解像度を誇るものの、入力長が10 kb程度に制限されていました。一方、EnformerやBorzoiのように数十万塩基を読めるモデルは、出力を32〜128塩基単位にまとめる必要があり、細かな転写因子の結合部位などが不鮮明になる欠点がありました。

AlphaGenomeはU-Netに着想を得た構造を採用し、局所の特徴を拾う畳み込み層と、長距離の依存関係を捉えるTransformerを組み合わせています。さらに、8台のTPU v3を連携させたシーケンス並列処理を導入することで、1 Mbという長大な配列全体に対して単一塩基解像度の学習を成立させました。

直線的なゲノム情報を示す1次元の埋め込みだけでなく、ゲノムの立体的な接触マップを表す2次元の埋め込みも同時に生成できます。

26のベンチマーク中25で既存最高モデル超え

AlphaGenomeのもうひとつの強みは、複数の分子モダリティを単一のフレームワークに統合した点です。

ヒトとマウスのゲノムで学習されており、ヒトで5930、マウスで1128のゲノムトラックを同時に予測します。これには遺伝子発現や転写開始、クロマチンアクセシビリティ、ヒストン修飾、転写因子結合、立体構造、さらには詳細なスプライシングパターンまで含まれます。

これまで、何でもこなす汎用モデルは個別の専用モデルに精度で劣るのが通例でした。しかしAlphaGenomeはその常識を覆しました。

ゲノムトラック予測タスクでは24中22で最高性能を叩き出し、変異影響予測タスクでは26中25で既存の最高水準モデルと同等以上のスコアを記録しました。臨床的に重要なTAL1がん遺伝子周辺の非コード変異についても、複数の分子メカニズムを一度に正確に再現できることを実証しています。

なぜ重要か

私たちは、AlphaGenomeが計算ゲノミクスにおける「ツールの断片化」を解消する重要なマイルストーンになると考えています。

研究者や臨床現場にとって、非コード領域の変異解析は長らく手探りの作業でした。スプライシングの変化を見るツールと、三次元構造の変化を見るツールがバラバラだったため、変異が引き起こす複合的な連鎖反応を見落としがちでした。AlphaGenomeを使えば、単一の配列入力から多角的な影響を同一プラットフォーム上で把握でき、希少疾患やがんの原因特定、創薬ターゲットの探索が大幅に効率化されます。

業界の視点で見ても、長配列並列化とTransformerの組み合わせによって「汎用モデルが専用モデルに負ける」という長年の限界を乗り越えた点は非常にスマートです。

一方で課題もあります。1 Mbもの配列を単一塩基解像度で学習・推論する計算コストは極めて膨大で、一般的な研究室が独自にファインチューニングを行うハードルは依然として高いままです。研究チームは推論用のツールを提供していますが、AIの予測値が実際のウェットな実験現場でどこまで迅速に検証され、治療へと結びつくかが今後の真の試金石になりそうです。

情報源 (1)

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    nature.com(新しいタブで開きます)原文nature.com

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