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業界動向

DoorDashが新アプリ「Tasks」を試験公開:配達員に動画や音声を撮影させ、AIやロボットを学習へ

公開 拡散指数 48

DoorDashは配達員が配達の合間にデータ収集を行って報酬を得られる「DoorDash Tasks」を発表し、専用アプリのテストを開始した。配達員は料理の撮影や日常動作の動画撮影、音声録音などを通じてAIやロボットの学習を支援する。米国の特定地域で提供されている。

DoorDashが新アプリ「Tasks」を試験公開:配達員に動画や音声を撮影させ、AIやロボットを学習へ
画像:about.doordash.com

出前を届ける配達員が、配達の合間にボディカメラを装着して皿洗いの様子を動画に収める。DoorDashがいま始めようとしているのは、まさにそうした試みです。

米フードデリバリー大手のDoorDashは新プログラム「Tasks」を発表し、専用の独立アプリのパイロット運用を開始しました。800万人を超える配達員ネットワークを活かし、配達以外の時間を使ってAIやロボットの学習に必要な実世界データを収集させ、報酬を支払う仕組みです。

街を走る配達員がAIのデータ収集部隊に

ウェブ上のテキストをいくら集めても、物理世界で動くロボットやマルチモーダルAIを育てるには限界があります。必要なのは、実生活の中にある生々しい現場のデータです。

DoorDashの配達員は、配達の合間や空き時間に細かなタスクをこなすことができます。報酬は作業の手間や難易度に応じて事前に提示される仕組みです。

実は同様の取り組みは、これまでの配達員向けアプリ内でも一部行われていました。飲食店のメニュー写真を撮影したり、迷いやすいホテルの搬入口を撮影したりする作業です。TechCrunchによると、自動運転車を展開するWaymoとの提携では、配達員が無人タクシーの半開きのドアを閉めに行くといったタスクも用意されていました。同社によれば、2024年以降すでに200万件以上のタスクが完了しているといいます。

今回テストされている専用アプリは、これをAIやロボティクス向けの本格的な学習データ収集へと広げるものです。Bloombergの報道によると、配達員がカメラを身につけて最低5枚の皿を洗う様子を手元から撮影し、洗い終わった皿をカメラの前に数秒間かざすといったタスクが存在します。また、多言語の音声を録音する案件もあります。収集されたデータは自社モデルだけでなく、小売、保険、宿泊、IT業界の提携企業にも提供される予定です。

なお、このサービスは米国の特定地域で先行提供されていますが、ギグワーカー保護の規制が厳しいカリフォルニア州、ニューヨーク市、シアトル、コロラド州は対象外とされています。同様の動きとしては、Uberも昨年末にドライバーがAI学習用の写真を撮影して副収入を得られる仕組みを発表していました。

なぜ重要か

配達員にとっては、注文が入らないアイドル時間を現金化できる現実的な手段になります。駐車場で次の配達を待つ間に、短時間の動画撮影や写真撮影で小遣いを稼げるからです。AI開発側にとっても、これまでスタジオを借りて人を雇い、膨大なコストをかけて集めていた一人称視点の作業データを、格安かつ大規模に調達できるメリットがあります。

業界全体で見れば、AIの競争領域がネット上の情報から「物理世界のリアルデータ」へと完全に移ったことを示しています。UberやDoorDashのようなギグエコノミー企業が、AI企業にとって不可欠な地上インフラになりつつあります。

既存の物流ネットワークをデータ収集網へと転用する発想は非常に合理的です。しかし、品質の担保は簡単ではありません。手早く稼ぎたい配達員が適当に撮影したデータをどうフィルタリングするのかという課題が残ります。また、規制の厳しい都市を最初から除外している点からもわかる通り、労働法を巡るリスクは常に付きまといます。これらの軽作業が最低賃金の対象とみなされるような事態になれば、低コストという最大の強みが揺らぐ可能性もあります。

情報源 (2)

  1. [1]
    about.doordash.com(新しいタブで開きます)原文about.doordash.com
  2. [2]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com

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