DoorDash、AI経由の注文は「累計で数百件」と報告 日次300万件の規模で
米DoorDashのトニー・シューCEOが決算で、外部AIエージェント経由の注文は累計でも「数百件程度」にすぎないと明かした。同社は1日約300万件を配達しており、CEOはエージェント商取引への過度な妄想を戒めつつ、自社製AIの実験も続けていると説明した。

AIエージェントが人間の代わりに買い物を済ませる「エージェント商取引」がテック業界で熱く語られていますが、フードデリバリー最大手の現場から届いた数字は予想以上に冷ややかでした。
米DoorDashのトニー・シューCEOは10月30日の第3四半期決算説明会で、MuseやInstinct、Foといった外部のサードパーティ製AIエージェント経由で届いた注文は、累計でも「数百件程度」にとどまっていると明らかにしました。
同社の2025年レポートによると、1日の平均配達件数は約300万件に達します。日常的に動く膨大なトランザクションと比べれば、外部AIからの注文は誤差にもならないレベルです。
重力には逆らわないが、妄想も抱かない
アナリストからの質問に対し、シューCEOは自らのスタンスを明快に語りました。「テクノロジーにおいては重力に逆らってはいけない。だが同時に、妄想を抱いてもいけない」というのが持論です。
現実として、ほとんどのユーザーは今もDoorDashの公式アプリを開き、写真を見ながら自分の手で注文しています。
ただし、DoorDashがAIを完全に拒絶しているわけではありません。シューCEOは、エージェントのユースケースを学び、外部の開発企業と健全な関係を築きたいと語っています。将来的には、そうしたAIエージェントの内部に広告を出稿するビジネス機会もあり得ると言及しました。
実際、DoorDashは自社製ツールの開発には積極的です。今年6月にはプロンプトや写真で注文できるチャットボット「Ask DoorDash」を公開し、7月にはCLIエージェント、9月にはテキストメッセージで注文できるツールを投入しました。さらに法人向け注文を他のボットから行えるようにするMCPもリリースしています。
一方、小売・EC業界全体を見ると、AIエージェントへの対応は真っ二つに割れています。Amazonが個人向けショッピングボットのアクセスを厳しく遮断しているのに対し、競合のWalmartはシェア奪取を狙って歓迎の姿勢を見せています。
なぜ重要か
今回の発言は、生成AIのデモ動画と現実の商取引の間にある巨大な落差を浮き彫りにしました。
一般ユーザーにとって、食事の注文をAIに丸投げするメリットは現時点では薄いと言えます。外食やデリバリーの選択は、その日の気分や写真のシズル感、トッピングの調整といった細かな好みに左右されます。AIが注文を誤った際の手間を考えると、自分でアプリを操作した方が早く確実です。
業界全体にとって、DoorDashの立ち回りは非常に現実的で賢明に映ります。「累計数百件」という数字でバブルを冷ましつつも、自社内でMCPや注文ボットを整備し、将来の広告モデルまで視野に入れて防衛線を張っています。
私たちは、AIエージェントによる自動発注が定着するまでにはまだ相当な時間がかかると見ています。決済の安全性や好みの精緻な把握といった課題が解決されない限り、日常の購買体験がアプリからボットへと一気に移り変わることはなさそうです。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com