DoNotPayのAIボットが法廷へ:イヤホンで被告に助言、敗訴時の罰金も全額負担
スタートアップのDoNotPayは来月、AIチャットボットを法廷に導入し、スピード違反の被告を弁護させる計画を明らかにしました。被告はスマホとイヤホンを装着し、AIの指示通りに発言します。法廷内での電子機器禁止規則を回避するため、補聴器扱いの抜け穴を利用する予定です。

法廷の被告席に座り、耳元のイヤホンから流れてくるAIの指示をそのまま口にする。SF映画のような光景が、来月いよいよ現実のものになろうとしています。
スタートアップ企業のDoNotPayは、同社が開発した世界初の「ロボット弁護士」を来月法廷に投入し、スピード違反の反則切符をめぐる裁判で被告の弁護を担当させると発表しました。
仕組みはシンプルです。被告はスマートフォン上で動くAIチャットボットを使い、法廷内で装着したイヤホンを通じてAIからのリアルタイムな弁論指示を受け取ります。被告は、AIが指示した言葉だけを法廷で話すことに同意しています。
この試みはDoNotPayの技術テストとして行われるため、万が一裁判に敗訴して罰金が発生した場合でも、同社が全額を肩代わりする契約になっています。
補聴器の規定を突いた奇策
法廷への持ち込みには大きな壁があります。通常、法廷内へのスマートフォンやイヤホンの持ち込みおよび使用は厳しく禁じられています。
DoNotPay創業者のJoshua Browder氏がNew Scientistに明かしたところによると、今回の審理が行われる法廷では、装着するイヤホンを「補聴器」として扱う解釈が認められているといいます。
Browder氏は、技術的には規則の範囲内に収まっているものの、規則の本来の趣旨に沿ったものだとは考えていないと率直に認めています。
DoNotPayは2015年、駐車違反の反則金や延滞料の支払いを回避するチャットボットとして創業しました。その後、OpenAIのGPT-3をはじめとする技術の進展に伴い、最新の生成AIを活用するシステムへと移行しました。New Scientistによれば、以前にもAIチャットボット単体で顧客の16ドルの銀行手数料を取り消すことに成功したほか、英米で累計300万件の案件を手がけてきたと主張しています。
法的な場にAIが登場した前例としては、2022年10月に人型ロボットAi-Daが英上院で著作権問題について証言した事例があります。しかし、法廷で被告人を弁護する立場に立つのは今回が史上初となります。
なぜ重要か
一般ユーザーにとっての価値は、日常的な法的トラブルの解決コストが劇的に下がることです。スピード違反の異議申し立てや不当な手数料の返還請求は、弁護士を雇う費用の方が罰金より高くなるため、泣き寝入りするケースが大半でした。スマホのAIがその場で抗弁手順を教えてくれるなら、手軽な対抗手段になります。
しかし、現時点で一般の裁判に広く使えると期待するのは早計です。今回は敗訴してもDoNotPayが罰金を肩代わりしてくれるから成立する実験にすぎません。複雑な民事訴訟や刑事裁判でAIが誤った主張をすれば、取り返しのつかない不利益を被ることになります。
業界の視点で見ると、同社のアプローチは極めて巧妙なPRであると同時に、法的なグレーゾーンを踏み越える危うさを抱えています。補聴器という抜け穴を使って法廷に持ち込む手法は話題性を集めるには十分ですが、各地の弁護士会や司法当局が「非弁行為」の観点から規制を強化する動きにつながる可能性が高いと考えられます。
法律AIの普及を阻む最大の要因は、モデルの性能そのものよりも、極めて保守的な法廷の手続き規定と資格制度にあります。今回の事例は、その法的な壁をAIがどう突破していくのかを占う試金石になりそうです。
情報源 (2)
- businessinsider.in(新しいタブで開きます)原文businessinsider.in
- iflscience.com(新しいタブで開きます)報道iflscience.com
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