脳波をテキスト化するAI「DeWave」、シドニー工科大が開発
シドニー工科大学の研究チームは、電極キャップを被るだけで脳波をテキストに変換するAI「DeWave」を開発した。インプラント手術なしで思考を読み取り、初期実験で40%超の精度を達成。現在は動詞の認識が得意な一方、名詞の混同などの課題があり、麻痺患者の意思疎通に向け精度向上を進めている。
頭蓋骨を削ってチップを埋め込むことなく、専用のキャップを被るだけで頭の中の思考が文字になる技術が登場しました。
オーストラリアのシドニー工科大学(UTS)の研究チームは、脳波を直接テキストへと翻訳するAIシステム「DeWave」を開発しました。初期の実験において、すでに40パーセントを超える精度を記録しています。
脳波と視線を組み合わせて解読する仕組み
脳コンピューターインターフェース(BCI)といえば、イーロン・マスク氏率いるNeuralinkのような外科手術を伴う侵入型アプローチが注目されがちです。しかしDeWaveは、頭皮に密着させる脳波計(EEG)キャップを用いる完全な非侵入型システムを採用しています。
学習方法も特徴的です。被験者が文章を読んでいる最中の脳波と眼球の動きを同時に記録し、視線が特定の単語に固定された瞬間の脳波パターンを結びつけることで、AIに思考の解読方法を学習させました。
UTSの主幹研究員であるChin-Teng Lin教授によると、DeWaveは脳波からテキストへの変換プロセスに離散エンコーディング技術を初めて導入し、大規模言語モデル(LLM)と統合したシステムです。
実験では動詞の識別が最も得意である一方、具体的な名詞については類義語のペアとして誤認識されるケースが見られました。意味が似ている概念は脳内で類似した波形を生み出しやすいため、判別が難しいと研究チームは説明しています。
なぜ重要か
発話やタイピングが困難な麻痺患者にとって、外科手術のリスクなしに思考だけで意思疎通ができる道が開かれた価値は極めて大きいと言えます。ただし、現在の精度は約40パーセントにとどまっており、実用化の目安とされる音声認識並みの90パーセントにはまだ遠いため、今すぐ一般ユーザーが使える段階ではありません。
技術面では、ノイズが多く扱いにくい非侵入型EEG信号の欠点を、LLMの文脈補完能力でカバーするというアプローチの巧手さが際立っています。高価な生体埋め込みチップに依存せず、ソフトウェアと既存のウェアラブルセンサーの組み合わせで解読を試みる方向性は、普及のハードルを大きく下げる可能性があります。
一方で私たちは、LLMによる補正が強すぎることで生じるリスクを注視すべきだと考えています。出力された文章が本人の本当の思考なのか、それともモデルが前後の文脈から勝手に推測した幻覚なのかを見分ける基準を確立することが、今後の臨床応用における最大の課題になりそうです。
情報源 (1)
- readwrite.com(新しいタブで開きます)原文readwrite.com