Google DeepMindが「SIMA 2」発表、Gemini搭載で3Dゲームを自律推論プレイ
Google DeepMindはGeminiを中核に据えた3D仮想環境向けエージェント「SIMA 2」を発表しました。画面を見てキーボードとマウスで操作するだけでなく、目的を推論して言語で説明し、未経験の世界でも自己改善しながらプレイできます。現在は研究者向けに限定プレビュー公開中です。
ゲームでAIのチームメイトと遊ぶとき、決まった命令しか通じず、少し指示をひねっただけで壁に突っ込む姿にがっかりした経験はないでしょうか。Google DeepMindが目指しているのは、そんなスクリプト通りのNPCではありません。
DeepMindは仮想3D世界向けの汎用AIエージェントの次世代版「SIMA 2」の研究プレビューを公開しました。昨年登場した初代SIMAは「左に曲がる」「ハシゴを登る」といった基礎的な操作をこなすだけでしたが、今回は頭脳としてGemini 2.5 Flash-liteモデルを丸ごと組み込みました。指示に従うだけの存在から、目標について思考し、プレイヤーと対話しながら自律的に腕前を上げる相棒へと進化しています。
絵文字を理解し、初めてのゲームにも適応する
初代SIMAは商用ゲームを舞台に600以上のスキルを学習したものの、複雑な長時間のタスクになると人間の達成率71パーセントに対してわずか31パーセントにとどまっていました。TechCrunchによると、Geminiを統合したSIMA 2はこの複雑タスクの達成率を初代の約2倍に引き上げたといいます。
推論能力を備えたことで、指示の柔軟性が大きく向上しました。「熟したトマトの色の家に行って」と頼まれると、AIは熟したトマトは赤色だから赤い家に向かうべきだと自ら判断して行動します。研究チームによれば、チャットに斧と木の絵文字を入力するだけで、意図を汲み取って伐採に向かうことも可能です。
さらに目を見張るのは汎化能力です。未学習のバイキングサバイバルゲーム「ASKA」やマインクラフト環境に放り込まれても、別タイトルで学んだ採掘の知識を収穫という別のアクションに応用できます。テキストや画像からリアルタイムに新規3D世界を生み出す同社の「Genie 3」と組み合わせた実験でも、一度も見たことがない生成ワールドの中でベンチや木、蝶を正しく認識して探索を続けられました。
人の手を借りずに自ら腕を上げるループ
学習の仕組みも大きく変わりました。初代は人間のプレイ動画データに完全に頼っていましたが、SIMA 2では人間のデータを初期のベースラインとして使うだけに留めています。
新しいゲーム環境に入ると、別のGeminiモデルが課題を自動生成し、さらに評価モデルがエージェントの行動を採点します。SIMA 2はAIからのフィードバックを受けて試行錯誤を繰り返し、自分のプレイ経験そのものを次の学習データに還元します。人間の手を介さずに自らスキルを研ぎ澄ますループが出来上がっているわけです。
ただしDeepMindによれば、現状はあくまで研究プレビューです。低遅延でリアルタイムに動かすためにコンテキストウィンドウを小さく絞っており、記憶の保持時間が短いほか、何十手も先を読むような超長期タスクにはまだ課題が残っています。
なぜ重要か
私たちは、DeepMindの本当の狙いはゲームの攻略ではなく、将来のリアルなロボット知能の土台作りにあると考えています。
物理世界で動く人型ロボットを作る際、最大の壁になるのは機体の関節制御そのものよりも、周囲の空間を把握し、曖昧な指示を分解して実行に移す常識的な推論力です。実世界でのロボット訓練は機体の破損リスクが高く、データ収集にも莫大なコストがかかります。
DeepMindのアプローチが巧妙なのは、商用ゲームやGenieが自動生成する3D空間を安全な実験場として使い、試行錯誤と自己改善のサイクルを完全に仮想空間内で回している点です。マウスとキーボードの入力だけで操作を完結させているため、ゲーム側の内部プログラムに依存せず、人間と同じ視覚情報だけで学習できるのも汎用性の面で優れています。
ゲーム業界にとっても、決まったセリフを繰り返すだけのNPCが、一緒に作戦を練れる真のコンパニオンに化ける未来を予感させます。推論コストと遅延の壁があるため一般のプレイヤーが日常的に試せる段階にはまだありませんが、大規模言語モデルが画面のチャット欄を飛び出し、身体を持って環境を行動する道筋をはっきりと示した意義は小さくありません。
情報源 (2)
- deepmind.google(新しいタブで開きます)原文deepmind.google
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com